… … …(記事全文3,944文字)●敦賀原発2号機再稼働申請不合格
日本原子力発電株式会社(以下「日本原電」という)敦賀2号機について、原子力規制委員会は、8月28日、再稼働の前提となる安全審査に不合格としたことを示す審査書の案を全会一致でとりまとめた。今後、一般から意見を募るパブリックコメントを経て正式に不合格となる見通しである。
安全審査は2015年に始まり、2号機の原子炉建屋の直下にある「K断層」について、すでに活断層と判明している「浦底断層」から枝分かれしており、活動性と連続性があるかが焦点となってきたが、審査を行う原子力規制庁は7月、活動性が否定できないと指摘した。活断層の真上に原子炉などの安全上重要な設備を設置することを認めていない規制基準に適合しているとは言えないと結論付けた形だ。
ここで、テレビや新聞などはすべて「初の不合格」としている。そのとおりなのだが、「合格ありき」という考え方に基づき「初」を強調しているのであれば改めるべきである。
●審査の長期化
それにしても判断に時間がかかり過ぎている。これについて、山中伸介委員長はこう釈明した。
「審査の申請から去年まで8年弱のあいだ、十分な審査ができる状況になかったという異常な状況があった。非常に多くの申請書の間違いやデータの書き換えなどがあって、まともな審査ができた期間は非常に限られていた」
「この1年、断層問題に論点を絞ったことで審査が進み、技術的に判断を下せたと思っている」
日本原電は「活断層は存在しない」との主張を繰り返したが、その根拠となる提出資料の誤記や地質データの無断書き換えなどの不備が相次いで発覚し、審査が2度も打ち切られる異例の経緯をたどったことを示唆しているのだろう。
●日本原電の執着
「廃炉を検討する考えはございません。敦賀2号機は当社にとっても、福井にとっても、日本にとっても重要な原発だ」と村松衛日本原電社長は強気な姿勢を崩さなかった。何とも「往生際」の悪い会社である。そのくせ、活断層を否定するため、試掘溝を掘って再調査する意向を示したものの、「何の見通しにもなっていない。具体化できないか」との規制側の要求には、答えに窮したという。しかし、村松社長には強きに言わざるを得ない事情があるのだ。これについては後述する。
この村松社長の発言に対して、山中委員長は以下のとおり述べた。
「(改めて審査を申請することを検討していることについて)事業者の申請は否定しない」「再申請するならば、問題の断層だけではなくて、敷地全体の断層のリスクをきちっと評価をしてほしい。非常にたくさんの断層があるので、その活動性を否定することはたいへん困難なものとは推察する」
この発言には違和感がある。「たくさんの断層の活動性を否定することは困難」とするのであれば、最近、政府の「地震調査研究推進本部」が「兵庫県北方沖~新潟県上越沖」における日本海に、長さ 20㎞以上でМ(マグニチュード )7以上の地震が想定される海域活断層が計 25カ所あるとする「長期評価」を公表した。1月の能登半島地震で長期評価の遅れを指摘する声が出たことを受け、地方自治体などに速やかにデータを提供するため、評価を終えた項目から前倒しで公表した。発生確率の公表と新潟県上越沖以北の評価は来年以降になるという。
驚くことに、この一帯には廃炉が決定した原発を含め、東京電力柏崎刈羽原発7機、北陸電力志賀原発2機、関西電力と日本原電の全16 機、日本原子力開発機構の「ふげん」と「もんじゅ」2 機、 合計 18 機がひしめいているのだ 。しかも、柏崎刈羽原発が面する日本海は「新潟県上越沖」よりも北である。活断層を精査すると言うのであれば、海域断層もしっかりと評価すべきである。福島第一原発事故を巡り「長期評価」が著しく軽視、あるいは無視されていたことを忘れてはなるまい。少なくとも「長期評価」が出揃うまで一旦立ち止まるべきである。
蓮池透の正論/曲論
蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)