Foomii(フーミー)

蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

能登半島地震から1カ月 東電は意に介さず再稼働へ

●能登半島地震から1カ月

 能登半島地震が発生してから1カ月が経った。石川県では、なお1万4643人が避難生活を送っている。このうち9557人(65%)が、体育館・集会所など1次避難所でトイレや風呂も満足に使えない不便な生活を強いられている。石川県が呼びかけるホテルなどへの2次避難(7割超が県外)は進んでおらず、4792人と全体の33%でしかない。行き先の希望が通らないなどが原因しているという。行政は、機械的にバスで移送するのではなく、コミュニティを壊さないよう、また要支援者の声を聴くなど、血の通った対応を行わなければならない。


 死者は238人(うち15人が災害関連死)、安否不明者は19人だという。警察の調べによると、死因は圧死が最多、次に窒息・呼吸不全、低体温症・凍死と続くが、救出までの寒さに耐えられなかったことを想像すると胸が痛む。


 石川県内の停電は、9割以上が解消したものの依然として約2500戸が復旧していない。他方で断水は4万890戸が継続しており、仮復旧が3月以降までかかるという状況にある。

               (以上の数字は、いずれも1月31日現在)


 最大で24地区3345人(1月8日)とされていた孤立集落は、石川県によれば、「孤立状態は実質的に解消されたものの、道路の状態などが不安定だとして引き続き支援が必要な集落が多くあり、支援を続けることにしています」とのことだ。これはとても復旧とは言えないのではないだろうか。連日のようにテレビがドローンによる撮影映像を流しているが、能登半島の被害の全容はまだ解明されていないというのが実情だろう。


●政府の調査が遅かった

 こういった、被害の甚大さ、不十分な避難対応に対して政府は何をしているのかという思いを強くする。一方で、事前の行政が策定する防災対策の甘さにも問題があったともいえる。この点について、朝日新聞(2月1日付)は政府の調査の遅さを次のとおり指摘する。

「能登半島での群発地震を受け、石川県は2023年に計画の前提となる被害想定の見直しに着手したものの、今回の地震には間に合わなかった」

「1994年から2022年まで7期28年務めた谷本正憲・前知事(78)は『国は南海トラフに目がいき、日本海側の調査が遅れた』と見立てる。『県独自で評価して被害想定を見直すのは難しく、国に早く評価してほしいと何度も要望してきた。それが出たら早急に見直すつもりだった』と語る」

「(政府の地震調査委員会は)主要活断層より小さい陸域や沿岸の活断層を評価する『地域評価』についても、13年以降、九州→関東→中国→四国の順で公表してきたが、能登半島を含む中部地方は手つかずで『空白域』となっていた。人口の多い関東を除き、南から順に進めていたためだ」


●新潟県でも被害が

 新潟県でも住宅被害は、1万3086棟に上っている。そのほとんどが「液状化現象」によるものである。驚くことに「1964年新潟地震」と同じ地域で被害が発生しているというのだ。同地震の際、アパートなどが倒壊したことにより「液状化現象」という言葉が初めて世に出たことで知られる。例え、家の傾きや沈下を直したとしても、また同じことが起きる可能性は残る。つまり、地盤の抜本的な改良が必要なのである。現在、その技術・工法は確立されている。しかし、住宅密集地では作業場所の確保が困難であり、住民の同意を取り付けることも簡単ではない。悩みどころである。


 また、津波被害もあった。上越地域を中心に住宅の浸水、港での漁船の損傷が相次いだ。検潮所は県内に4カ所あるが、そのうち3カ所で観測された津波の最大高さは、柏崎市鯨波0.4メートル、新潟西港0.3メートル、佐渡市鷲崎0.3メートルであった。検潮所がない上越市では、関川河口で最大5.8メートル、なおえつ海水浴場で4.5メートルの遡上高が観測された。


●志賀原発は即時廃炉に

 志賀原発の状況について、北陸電力の情報発信が極端に少ないのに加え、メディアが一向に取り上げようとしなかった。しかし、ここにきて原発事故時の避難道路の半分以上が寸断されていたという事実が明らかになった。まさに、恐れていたことが露呈した形だ。具体的には、避難計画において避難道路として定められている国道や県道11路線のうち、半数以上の7路線で崩落や亀裂による通行止めが起きた。現在もなお一部で通行止めが継続しているのだ。


 30キロメートル圏内の輪島市と穴水町では、8集落435人が孤立した(1月8日時点)。志賀原発から北方向の輪島方面へ向かう国道249号は通行止め。七尾市や穴水町の避難道路である「能越自動車道」は、最大約68キロメートルの区間で通行不能となった。30キロメートル圏の9市町の住宅被害が圏外も含めると約2万5400棟にも上る。


 こんな状態では、5キロメートル圏内の即時避難はもちろんのこと、30キロメートル圏内の屋内避難もままならない。そこへ持ってきて、避難の判断に使用するモニタリングポストの一部が測定不能になっているというのだから目も当てられない。


 この問題について、原子力規制委員会の山中伸介委員長は31日の定例会見で、「原子力災害対策指針」の見直しを「おおよそ2月半ばになると思うが、論点整理ができたところで議論を開始したい」と吞気なコメントをしていた。いずれにしても、北陸電力はさっさと原発事業から手を引いて、即時に志賀原発の廃炉を決定すべきである。


●変わらぬ東電の説明会

 そんな惨状と市民の不安を尻目に、原子力規制庁と東京電力は相次いで「地元説明会」を開催している。

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