… … …(記事全文5,017文字)【一部内容に誤りがありましたので、修正の上再送します。】
●東奔西走 2月5日(月)、弟(薫)は、翌日北海道・函館市で開催される講演会に備え、空路で同市へ入る予定だった。しかし、関東地方を襲った大雪で羽田~函館便の飛行機が欠航となった。そこで急遽、JR東日本大宮駅から東北・北海道新幹線を利用して新函館北斗駅まで行くことに変更した。さらに、2月7日には九州・佐賀市入りし8日に講演をした。
文字どおり東奔西走、地元大学で働く傍ら日本全国を駆け回っている。主催は行政、人権団体、小学校、中学校、高校等様々であるが、選ぶことはせず拉致問題の一日も早い解決を訴えている。もちろんのこと、講演をビジネスとは考えてはいない。下世話な話になるが、小中校の講演料は時給換算されるとのことだ。そして与えられた時間は1分たりとも無駄にしたくないという。どうして、弟はここまで情熱を傾けるのか。
●家族の意見 家族、特に口うるさい母は「毎日のように出かけている。祐木子(妻)はまるで未亡人のようでかわいそうだ。もっと自分の家族のために時間を使うべきだ」「お前一人が話すこととで誰かが帰ってくるのか。一人で何ができるのか」と責め立てるような口調で迫るが、弟は耳を貸さない。
私も「『全員生存』とお前が言うと、聞いている人は『あの蓮池さんが言うのだから間違いない』と誤解する。せめて推測という言葉を入れた方がいい。家族会・救う会の主張と変わらないではないか」と忠告したことがある。これに弟は「俺は俺なりの考えでやっているんだ。家族会や救う会との見解とは偶々同じになっているだけだ。兄貴は拉致問題に口出しするな」と烈火のごとく怒った。確かに弟の活動は家族会・救う会のそれとは一線を画しているのは事実だ。
また、私は旧稿で被害者が被害者救出運動を行うのはどう考えてもおかしい。すべて国の責任で解決するのが筋で、弟を利用するのはいい加減にしてほしいと何度も述べてきた。メディアも弟にインタビューし、自分たちのシナリオどおりになるよう弟の発言の一部を抜き取るような手法をとるべきではないとも警鐘を鳴らしてきた。北朝鮮が提示してきた「死亡」の証拠が偽物であることと「全員生存」との間に必要十分条件は成立しないとも書いた。
●弟が語った真意 さすがの弟も日本政府がいかに無為無策であるかは百も承知である。一体何人の閣僚や与野党を問わない国会議員が「お知恵拝借」と弟の元を訪ねてきたことか。また、一人ではどうにもならない無力感も人一倍あるだろうし、小中学生や高校生など若者に託すような問題でないことも十分に承知しているはずだ。
それではなぜそこまで。ある日、私に真意をぼそっと語ってくれた。弟は、決まって大事なことを似つかわしくない状況で私に告げる。
蓮池透の正論/曲論
蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)