Foomii(フーミー)

蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

真夏の夜の出来事 その後(2)

●コロナ院内感染 症状は軽い

 旧稿で「コロナ感染により、父のリハビリは個室内で行うことを余儀なくされた。理学療法士からは『リハビリ計画に影響せず問題はない』と説明を受けた。しかし、何らかの支障が生じるのは否定できないと考える」と書いた。

 

 その後の経過を振り返ると思ったより軽く、発熱以外は目立った症状はなかった。当初3日間とされていたコロナ治療薬の点滴も2日で止めると、「頼りにならない主治医」から連絡があった。しかし、10日間の隔離措置はそのままで面会はできず、リハビリによる回復状況を理学療法士に確認はできたものの、本人の姿をこの目で確認できないもどかしさは残った。

 

 その間は、洗濯物の受け渡しと父のメモによる「ウイッシュリスト」に従った物などを届けるため病院に通うだけだった。そんな中、ナースステーションで看護師長から、「この度はご迷惑とご心配をおかけして申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉があり、少しばかり驚いた。「いや、先生にいろいろ叱られましたので、コロナに関する社会通念が何かとか、あんまり私がこちらへお邪魔してはいけないのかとか、考えさせられました」と最大の皮肉を込めて言うと、「あら先生そんなこと言っていたんですか」と看護師長が平然と答えたのに二度びっくりだった。

 

 一方で、異動を目前に控えた主治医から電話があった。「今週限りで異動します。お父さんが元気で退院するまで面倒を見ることができず非常に残念です」。挨拶のつもりだったのだろうが、前回の攻撃的な電話とは打って変わって殊勝な口ぶりだった。反省したのだろうか。私は「後任はどなたですか」と尋ね、あとは黙って聞いていた。「現在の医師長の〇〇です」と応答されたが覚えていない。すでに彼との信頼関係は消滅していたし、交代で新任の医師が異動してこないとは新潟県も医師不足が深刻だ、と感じただけだった。

 

●隔離期間終了 退院の相談

 隔離期間が明け、ほどなくして理学療法士から「リハビリ結果を見てもらい、退院時期の相談をしたい」と連絡があった。

 

 指定の日時に病院へ行き、まず父の回復ぶりを見せてもらった。歩行器や杖を使用しての歩行は良好で、20センチメートルの台には杖を使用して自力で上ることができた。ただし、降りるときは介助が必要とされた。また、歩行器や杖を使わなくとも40メートル独歩できるという。格段に回復しており、コロナ感染によるリハビリの遅れは、どうやら杞憂だったと感じた。

 

 理学療法士は「高齢とけがの程度から考えれば非常に良好にきています。私にもあまり経験のないことです」と前置きしたうえで詳細に説明してくれた。入院から約8週間、リハビリ開始から約6週間経過して、自立での起き上がり・乗り移りは可能、床の立ち座りは可能、食事・入浴・トイレも自立しており、能力的には室内で杖を使って伝い歩きによる生活が可能との見通しを示してくれた。ただ、階段などの段差に関しては、手すりが無ければ一部介助が必要になるとの所見だった。

 

 また、退院後に自宅で設置すべき器具は、一番ネックとなる入浴に関して、シャワーチェア、入浴時のグリップ、浴槽内台座は最低限必要とのリコメンドがあった。その後の相談で脱衣室の手すりの代わりとなる突っ張り棒、浴室内滑り止め、玄関入り口階段の手すり、ベッドが必要だと確認した。父からの要望で歩行器も用意することとなった。

 

 社会福祉士からは、すべての介護用器具は介護保険が適用され水回り品は買い取りとなるが、その他はレンタルできるとの説明があった。「介護認定がまだされていないが」と私が質問すると、「おそらく要介護3となる見込みと聞いています」との回答。誰から聞いているのかは尋ねなかったが、内々で通じているのかとモヤモヤが募った。また、民間ケアマネジャーについても社会福祉士が手配し紹介してくれるということだった。

 

●介護認定通知が来ない

 退院日時は決めたのに、介護認定通知が未だに来ていない。要介護認定申請から、1カ月半が経ち、訪問調査(病院における)が行われてからも1カ月以上が経過している。最低で1カ月で認定されるはずではなかったのか。市役所の福祉保健部介護高齢課介護認定係に問い合わせた。

 

「1カ月は軽く過ぎているのですが、まだ認定されないのですか」と不満一杯に訊くと、担当者は「確かに申請もいただいておりますし、訪問調査も終了していますが、病院からの意見書が届いたのが数日前ですので、次の介護認定審査会を経て決定されます」との返答。「次の審査会はいつですか」と尋ねるも「それは申し上げられません」とのことだった。市役所から病院に対して「早く出してください」といった催促はしないとも聞いたので病院に問い合わせた。

 

「なぜ意見書送付に1カ月を要するのですか。それが通常なのですか」と病院の担当部署に語気を強めて追及すると「私たちは医師が書いた意見書を市役所へ送付しているだけですので分かりません。送付までの期間はあくまで医師の判断ですのでこちらではお答えできません」という無責任なものだった。異動した主治医の「置き土産」がこれかと穿った見方もした。だが、社会福祉士の「早く申請しろ」というアドバイスは、こういったタイムラグを見込んでのことだったのかと考えれば腑に落ちるところもある。

 

… … …(記事全文5,130文字)
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