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蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

7月31日で弟拉致から45年経過しましたが、何か?

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/20230811053000112568 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●弟の拉致から45年  この7月31日で弟の薫夫婦が北朝鮮に拉致されてから、丸45年が経過した。ほとんど話題にはならなかった。その中で地元紙新潟日報が、「歳月を超えて アベック拉致から45年」と題する特集記事を2日間(上、下)にわたって掲載していた。例の如く横田早紀江さん自筆の「祈り」という「シンボルマーク」が添えられている。読んでみたが、やらないよりましといった程度で、その内容は、ひねくれ者の私にとって「継続は力なり」のように感じられた。何とも後味の悪さに囚われたのは否めない。 ●「富山の未遂 発覚の端緒」  特集記事は、1978年8月15日、富山県高岡市雨晴(あまはらし)海岸で発生した拉致未遂事件(富山未遂事件)から始まる。富山未遂事件とは、夕方5時半から6時にかけて、海水浴を終え自家用車に向かうカップルが、男4人組に襲われた。カップルは袋詰めにされたが、近くを通りかかった犬の鳴き声で男たちは逃げ、2人は別々に民家に助けを求め、警察が駆けつけたことで未遂に終わった事件である。一般にはあまり知られていない。  同記事は、「襲われた男性は『45年も前だ』と事件を語らない」としたうえで「後に拉致問題が明るみに出るきっかけとなった」と記す。私たちは、サンケイ新聞(当時)1980年1月7日付の朝刊トップ記事「アベック3組ナゾの蒸発 昭和53年夏 福井、新潟、鹿児島の海岸で」「外国情報機関が関与?」「富山の未遂からわかる 外国製の遺留品 戸籍入手の目的か」で未遂事件を知ることになる。被害者の氏名は非公表で、本人から状況説明が一切なかったため、もどかしさを覚えた記憶がある。  地元新聞では「逮捕監禁・暴行傷害事件」扱いであったところ、サンケイ新聞の記者(当時)の阿部雅美さんの記事により、外国情報機関に関連付けされた。阿部さんは、被害者本人には断られたが両親には取材している。また、犯人の遺留品(1985年に富山県警が廃棄処分)すなわちモスグリーンの布袋、手錠、サルグツワなどが日本製でないことを自力で突き止めている。  阿部さんは、翌8日付朝刊社会面で「『家で考えられぬ』新居決め挙式目前に 福井事件」「3度のデート 笑顔の写真残し 鹿児島事件」「将来設計話したばかり 翌日に旅行の計画 新潟事件」を報じた。しかし、後追いするメディアはなく、社会問題化することはなかった。つまり、その後15年以上の空白期間があったのだ。(この件は、阿部雅美著「メディアは死んでいた 検証北朝鮮報道」〈2018年 産経新聞出版〉に詳しい)  したがって、未遂事件を殊更に取り上げることの意義は見出せず、阿部さんには申し訳ないが「拉致問題が明るみに出るきっかけ」にはなっていない。 ●「関心失うこと怖い」「日朝首脳会談に望み」  特集記事は、こんな見出しで続く。鹿児島での署名活動や市川健一さんのコメントを紹介している。 「拉致はつらい出来事。国民の皆さんには忘れずに考え続けてもらいたい」  また、増元照明さんのコメントも。 「警察や公安関係者も当時から北朝鮮の関与を疑っていたかもしれない。あの時すぐに公にしてくれていれば」  そして、「家族も高齢化や世代交代が進み、活動は減っている。社会が関心を失うことが怖い」「今、望みをつなぐのは、岸田文雄首相も意欲を示す日朝首脳会談の実現だ」と述べている。  まず、署名について言えば、もう何千万筆も日本政府に届けているのに、これ以上集めてどうするのか、政府は動くのかという思いが募る。もちろん、家族にとっての運動は、署名や講演に限定されるのは承知の上で。 「関心」という言葉が紙面に目立つ。拉致問題が進展しないのは、関心が失われているからとするのは政府の理屈と同様である。旧稿でも述べたが、関心度の低下は「政府の無為無策⇒メディア報道の減少⇒無関心化⇒政府の無為無策⇒」という負のサイクルが完結していることに起因するのを忘れてはなるまい。そして、家族会を聖域化して情緒的な報道に明け暮れてきたメディアにも責任があることを自覚して欲しい。  さらに、日朝首脳会談が実現しさえすれば、拉致被害者の帰国が実現するのだろうか。疑問を抱く。日朝首脳会談の開催には相当な期間の地ならしが必要であり、かつ1回ではなく、少なくとも数回の開催が必要であろう。果たして、それほどの猶予があるのだろうか。安易な希望を家族に与えるのは罪深いと言えよう。 ●「北の狙い工作員養成」「計画頓挫、日本語教育係に」  弟へのインタビューに基づき、北朝鮮による一連の拉致は、当初は被害者を工作員にするためだったが、拉致されたレバノン女性が逃亡したのを機に、日本語教育係に変更したと記している。これについて、以下の弟の発言を引用している。 「後付けだった日本語教育を拉致の目的に仕立てることで拉致問題を『(特殊機関による)個人的問題』にしたかったのだろう」
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