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蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

KBSの再取材 福島で観て聞いた「差別」

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/20230630054000110893 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●韓国放送公社(KBS)の再取材  韓国放送公社(KBSテレビ1全国地上波公営放送局)から取材を受けたと前々回書いた。その後、同社スタッフからリモートではなく、対面でインタビューしたいとの申し入れがあり、スケジュールを調整した結果、東京で受けることとなった。 ⇒韓国の視察団メンバーは  場所は東京・東銀座の貸スタジオで、番組ディレクターによるインタビュー時間は予定をオーバーして1時間半に及んだ。まず、私から「その後、先日の韓国視察団のメンバーは明らかになりましたか」と尋ねた。すると「未だに分かりません」との返答。「もしかして偽装の団体だったのですか」と問い直すと「そんなことはあり得ません」と言う。さらに「メンバーを明かすと韓国内で何か問題が起きるのですか」と迫ると「何の問題もありません。むしろ明かさないことで国内では不信の声が上がっています」とのことだった。  煮え切らなかったが、番組ディレクターの「韓日首脳会談で決まった段取りではないでしょうか」との推測に納得するしかなかった。 ⇒東電の信頼性にフォーカス  質問は、汚染水海洋放出の問題点よりは、情報隠蔽を繰り返してきた東京電力という会社の体質、つまり東京電力の説明や提供するデータに信頼性はあるのかという点に集中した。番組もそこにフォーカスした内容になるという。 「なぜ東京電力はトラブル隠しをするのですか」というストレートな質問に対しては、「深刻なものを除いて、原発を止めたくないからです」と答えた。怪訝そうな顔をされたので「トラブルを公表した場合、地元自治体、国、メディアへの説明に時間を要する。そして、原因究明、再発防止策などを検討し、国に報告し了解を得るのに長期間かかる。その間、原発を停止せざるを得なくなるからです」と付け加えた。それでも、「とても理解できません」と言われた。 ⇒稼働率0%のトラウマ  そこで、私なりに分析した背景にあるものを次のとおり説明した。 「1980年代、福島第一原発は『応力腐食割れ(SCC)』対策でほとんど運転することができませんでした。稼働率が、酷いときには0%、良くても1桁台という状態が長く続きました。社内でも堅実な火力や水力部門から『莫大な費用を使いほとんど発電をしない原発は<金喰い虫>だ』と激しく批判されていました。これがある種のトラウマになり、SCCを克服した後も、原子力部門の社員は稼働率の維持に躍起になるとともに、トップからの至上命令にもなっていたのです」 ⇒福島第二でも深刻な事故が  一例として福島第二原発における再循環ポンプ破損事故を紹介した。 「今は、福島第一原発事故に隠れてしまっていますが、それ以前にも深刻な事故が起きていました。1988年1月1日、福島第二原発3号機で運転中に原子炉再循環ポンプに振動が発生しました。しかし、定期検査が間近に迫っていたため発電部長の独断で運転を継続したのです。その結果、水中軸受けリングが破損して脱落、約30キログラムの金属片が原子炉内に入るという前例のない事故が起きました。もし、すぐに停止していればこのような事態にはならなかったと思います」 「なぜすぐに停止しなかったのですか」「発電部長は上に相談しなかったのですか」「本社とは情報共有しなかったのですか」。矢継ぎ早に質問が飛んできた。 「発電部長は、とにかく停止したくなかったのです。現象を甘く見て自身の判断で、定期検査まで引っ張って修理すれば良いとしたのでしょう。もちろん、正月で人員がいなかったという側面もありますが、上長に報告したり本社へ連絡したりすると『大事』になってしまう。それは避けたかったのでしょう。結果的には、想定より深刻な状態で長期の停止を強いられることになりました」 ⇒プレスリリースは「小泉訪朝」に合わせて  同ディレクターは、信じられないという表情を浮かべながらも、東京電力原子力部門の体質を少しは理解したようだった。さらに、2000年に内部告発により発覚した「東京電力トラブル隠し事件」に関して、調査報告書のプレスリリースを2002年9月17日の「小泉訪朝」に合わせるように行ったことを紹介した。「何のためですか」と訊かれたので「メディアの取り扱いを矮小化するためです」と答えると「なるほど。でも韓国では考えられません」という発言が私にすれば新鮮だった。 「福島第一原発事故、東京電力は変わりましたか。炉心溶融をなかなか認めませんでしたが」の問いには「一度身にしみついた体質はそう簡単に変わるものではありません。脈々と受け継がれていると思います。柏崎刈羽原発で『原因究明と再発防止策』を際限なく繰り返しているのを見れば明らかです」と答えた。 ⇒KBSテレビ1「KBS時事直撃」のOAは7月7日  カメラを前に、その他いろいろなことを喋った。私以外にどんな取材をしているかは聞いていない。KBSがそれらをどのように番組に反映するかは今のところ不明である。だが、7月7日午後10時から、KBSテレビ1「KBS時事直撃」が放送されることは決まっている。残念ながら、日本ではリアルタイムで視聴することはできないが、後日方法があれば拡散したいと考えている。
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