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蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

終末期のがん患者と緩和ケア 実体験から考える

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/20230623054000110602 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●毎日新聞の記事  毎日新聞の電子版記事「がん患者が自由診療に感じる魅力 専門家が分析」を読んだ。記事には専門家の見解として以下の記述があった。 「まず医師は、患者や家族を突き放して孤独にさせてはならないという」 「その上で、終末期に抗がん剤を使っても効果が期待しにくいだけでなく、命を縮める可能性があることを患者や家族に寄り添いながら説明して、理解してもらう必要がある。『緩和ケアは、苦しみを抑える大切な治療だと時間をかけて納得してもらうことが大切だ』と訴える」 「現在の医学では再発や進行性のがんでは治療が難しい場合が多い。患者や家族は、それを知ることも重要で『がん患者は死亡する1カ月前まで体の状態がよいことが多い。だから治療法がないことに納得しづらく、自由診療の宣伝文句に魅力や期待を感じやすくなってしまう』と話す」 「患者や家族を孤独にさせてはならない」「終末期に抗がん剤を使っても効果が期待しにくい」「緩和ケアは苦しみを抑える大切な治療」「がん患者は死亡する1カ月前まで体の状態がよい」「自由診療の宣伝文句に魅力や期待」。これらは、いずれも私の身に覚えのあることだった。そこで、本稿では、命日が近いこともあり、肺がんで亡くなった元妻の闘病生活について改めて振り返ることにした。  なお、旧稿「離婚時の年金分割をしたある熟年夫婦の悲劇」(2021年4月23日配信)  https://foomii.com/00200/2021042306000079254 においても元妻の死について触れており、一部同じ内容が再出することをお断りしておく。 ●3年ぶりの再会  娘の親族の葬儀で3年ぶりに離婚した元妻に再会した。2015年1月初旬のことだ。私は、想像以上にやつれている彼女の姿を見て違和感を抱いた。葬儀の後それとなく娘に尋ねると、「最近具合悪くって、医者に診てもらったら、肺がんで、それもステージⅣなんだよ」。そう聞いて愕然とするばかりだった。 ●きっかけは「靴が履けない」  彼女は、昔からパートに精を出していた。その後も続けていたようだが、ある日靴が履けなくなったという。足が酷くむくんでいることに初めて気付き病院へ行った。最寄りの昭和医大病院で精密検査を受けた結果、肺がんと診断された。何かの間違いではと、聖路加国際病院でセカンドオピニオンを聞いたが結果は同じだった。サードオピニオンも聞いたが変わりなかった。パートであるため定期健診を受けていなかったのが災いしたと考えると残念だ。  足のむくみと聞いて、すぐに思い起こしたのは彼女の姉のことである。胆管がんで46歳という若さで亡くなったのだが、入院中のベッドで目にしたのが、象のそれのようにむくんだ足だった。ちなみに、彼女の父も肝臓がんのため60歳で亡くなっている。  一般的に肺がんの切除手術は、部位が心臓に近いため難しいとされるが、両肺が冒されているため切除手術は不可能で、最終的に東京・がん研有明病院で治療を受けることになった。 ●転記ミス  まず、最先端治療薬である免疫治療薬ニボルマブ(商品名:オプジーボ)に望みを託した。2018年のノーベル医学生理学賞に、同薬の開発につながる研究をした京都大学本庶佑名誉教授が選ばれたことで脚光を浴びたのは記憶に新しい。だが、当時の薬価は非常に高かった。それでも背に腹は代えられなかった。  肺がんに対して、この療法を適用するためには遺伝子検査による適性確認が必要とされた。行った遺伝子検査では、陽性(+)という判断が出て安堵していた。ところが、後に担当医師から呼び出しがあり、「実は陰性(-)でした。申し訳ない」と告げられた。一縷の希望を有していた家族、特に娘たちは、失望のどん底に突き落とされた。「何故ですか」の問いに、医師は「検査結果の転記ミスでした」。  我を忘れた二女は「+か-なのに何でそんな間違いをするのですか。母の命を蔑ろにするなんて許せない」と泣きながら食って掛かった。しかし、結果が覆ることはなく、通常の抗がん剤治療に委ねざるを得ない状態になってしまった。  最初からこの一件で、私たちは医師から思い切り突き放された。冒頭の専門家の見解とは正反対である。その後、いくら離別したとは言え、30年以上連れ添った元妻が窮地に喘いでおり人道的に考えても、私は久しく会っていなかった元妻の見舞いに足しげく通った。 ●抗がん剤治療開始
… … …(記事全文5,820文字)
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