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蓮池透の正論/曲論

蓮池透(元東京電力原子力エンジニア)

蓮池透

近くて遠い福島 連携し大きなうねりに

ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00200/20230707054000111172 //////////////////////////////////////////////////////////////// 蓮池透の正論/曲論 https://foomii.com/00200 //////////////////////////////////////////////////////////////// ●近くて遠い福島 ⇒飯豊山地に阻まれる? 「近くて遠い福島」。先週福島を訪れそんな思いを新たにした。距離にして、当地新潟県柏崎市から福島市や郡山市のある中通り地方までは約250キロメートル、浜通り地方までは300キロメートル超だ。列島を横断することになるが、東京より近く決して遠い場所ではないだろう。経済や文化の盛んな交流があっても不思議ではないが、耳にするのは冬場の猪苗代や磐梯スキー場へのレジャーくらいで、往来は専ら東京との間である。  何より、同じ東京電力の原発がある県どうしである。もっと情報を共有するとか、交流するとかできないものだろうか。飯豊山地をはじめとする越後山脈が円滑な往来を阻んでいるのは事実だし、鉄道での移動は心許ない。常磐自動車道はあるものの、完全4車線化は実現しておらず、トンネルが多く走りにくいのは否定できない。 ⇒多くの人が新潟へ避難  福島第一原発事故直後は、隣県である新潟県へ避難する人が約7300人と全国で最も多かった。現在は約2200人で、東京都や埼玉県への避難者(いずれも約2300人)の方が多い。柏崎市へ避難した人も、一部報道では約2000人とされたが、自治体の公表では500人前後となっている。ここで、疑問に感じるのは原発事故から避難するのに、何故わざわざ原発がある土地に避難するのか、である。地元では、東京電力柏崎刈羽原発が空いている社員用住宅を提供しているとの美談が流布したが、その事実はない。避難者の中には、新潟県内で原発に反対して政治の道を志す人もいれば、柏崎刈羽原発の再稼働について「せっかく作ったんだから運転すればいい」という人もいる。 ⇒福島の人たちはみんな原発反対?  愛媛県の伊方原発の運転に半世紀近く反対してきた知人が、初めて福島県を訪問したときの衝撃をこう語っていた。「原発事故や津波・地震による大変な思いを多くの人から聞いて涙が出た。でも、その人たちから『だから・・・』と後が聞こえてこない。事故で酷い目に遭った福島の人たちは、みんな原発に反対だと思っていたのに。ショックだった」。前稿で述べた、福島県に住む人たちや避難している人たちの複雑な心境とその背景を認識するには、滞在時間が短過ぎたのだろう。 ●KBSからの電話で中断  ここまで書いたところで、先週インタビューを受けた韓国放送公社(KBS)のスタッフから電話がかかってきた。「蓮池さんが、福島第一原発に勤務していたころの写真を提供して欲しい。福島第二原発の再循環ポンプ破損事故についてもう少し知りたい」とのことだった。当該の写真はほとんど残っていない。ようやく探し出し、提供した1枚の写真を見ていたら、当時の記憶が鮮明に蘇ってきた。 ●1枚の写真で蘇る福島での生活  それは、福島第一原発へ着任直後、出勤前に作業服を着て同期3人とともに福島・富岡町の独身寮の玄関前で撮った写真だった。出勤から退勤・帰宅まで作業服のままだったことは旧稿で述べた。富岡町独身寮発の通勤バス(委託を受けた常磐交通が運行)に乗り、いくつかの寮を経由して原発まで約1時間かかる。帰宅時も同様である。1カ月もすると、単調な往復を繰り返すバスが「護送車」に見えてきたことも以前触れた。 ⇒福島のチベット「文化も文明もない」  初めて国鉄常磐線富岡駅に降り立った時にショックを受けた。夜8時、駅前が真っ暗で静まり返っていたからだ。当時は、双葉郡のことを「福島のチベット」と両者に失礼な蔑称を平気で使っていた。職場の上司は「この地には文化も文明もない」と躊躇いもなく語っていた。「そんなことはないですよ」と思ったが、言えなかった。管理職の多くは、金曜日の夕方終業チャイムが鳴るや否や、待ってましたとばかりに「単身赴任者用バス」に乗り込んで行った。一刻も早く、自宅のある首都圏に戻りたかった、逆に言えば福島にいるのが嫌だったのだ。それが当時の東京電力管理職の本性である。  原発は過疎地にしか建てられない。「原子炉立地審査指針」に従えばそれしかない。どちらが先かは定かではないが、おそらく前者であろう。過疎地を狙って原発を建設し、後付けで指針を策定した。過疎地なら反対する人は少ないという発想だ。 ⇒「ゴミは崖から投げどけ」  富岡町の寮で管理人の奥さんに「このゴミはどうしたらいいですか」と尋ねると「そこの崖のとこさ行って投げどけ」と言われ、同期2人とともに崖下へ向けてゴミ袋を思い切り投げた。後で
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