… … …(記事全文3,588文字)トランプの関税政策を巡って世界が大騒ぎしています。しかし、トランプがやろうとしていることはずっと早くからわかっていました。私が1月に渡米して政権関係者と話した際にも「目的は交渉の席についてもらうことと、対中ディカップリングです」とはっきり聞いていました。こういう時は受け身にならずにこちらから「具体的な懸念点はどこですか?」「認識の差を埋めましょう」「その上で解決策を見つけましょう」「我々も中国依存度を下げていくつもりでいます」と先手を打って議論の主導権を握ることが大切です。具体的な交渉を始めることによって、交渉への招待として関税をあげる意味を失わせてしまうのです。
ところが、石破政権がやっていることは真逆です。議論を避け、議題に上らないように逃げながら「対米直接投資をかつてない規模にしますから」などと歓心を買う努力をし、「だからいじめないでね」というメッセージを送りましたが無視されました。慌てて武藤経産大臣を送りましたが相手にされず、石破首相が電話会談を申し込みましたが通訳込みの20分で終わり、仕方なく同郷人の赤沢亮正衆議院議員を交渉役として送るとのことですが、「コーネル大学留学中に会得した米国流交渉術を使う」などと言っているようではおぼつかないでしょう。
「交渉への招待」と言われた通り、70以上の国々から交渉を求めるリクエストが殺到し、すでに関税0を提案している国も複数ありますから、トランプの狙いはとりあえず成功したように見えます。90日間の猶予期間を置いて、がっつり交渉することになります。一方で中国だけが反発して報復に出ていますから、中国だけを敵認定して攻撃することが可能になりました。これも狙い通りでしょう。
予想通りの展開ですが、私の理解不足だった点もありました。それは、トランプの関税政策が、短期決戦の不公正是正だけが目的ではなかったということです。いきなり高い関税を課せば、国内でのインフレと世界経済の混乱と停滞を招くリスクがありますから、短期間で勝負を決めることが重要だと思っていました。ところが、実はマクロ的な視点から中長期的にアメリカの貿易構造と産業構造を変え、貧富の格差を解消する目的が秘められていました。それを理解するには、次の二人の主張を理解することが必要です。
スティーブン・ミラン ハドソンベイキャピタル シニアストラテジスト
スコット・ベッセント財務長官
この二人の主張の要点を概観して、トランプが最終的に何を目指しているのかについて理解を深めたいと思います。
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