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山岡鉄秀の対外情報戦で勝ち抜けろ!

山岡鉄秀(情報戦略アナリスト)

山岡鉄秀

賛否両論 岸田しゃもじ外交‐日本人が知っておくべき事実
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ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00194/20230327140000107160 //////////////////////////////////////////////////////////////// 山岡鉄秀の対外情報戦で勝ち抜けろ! https://foomii.com/00194 //////////////////////////////////////////////////////////////// 3月21日、日本列島はWBC準決勝の対メキシコ戦に全集中していました。一点差を追う9回裏、大谷選手の2ベースヒット、吉田選手の四球でノーアウト一塁二塁の絶好のチャンスで今大会絶不調の村上選手。私に限らず、多くの人の頭に「代打」の文字が浮かんだのではないでしょうか。文字通り手に汗握る瞬間でした。 その時、突然画面に緊急ニュースのテロップ。「まだ試合は終わってないのに?」といぶかしがると、報じられたニュースは「岸田首相、キーフ電撃訪問」。何という絶妙のタイミングでしょうか?日本にとってどんなに重要なニュースでも、今だけは誰も見る気になれない瞬間でした。 その岸田首相のウクライナ電撃訪問。お土産に「必勝」と書かれたしゃもじが送られたことが話題になりました。思えば、私も高校の修学旅行で訪れた宮島で必勝と書かれたしゃもじを買った記憶があります。とっくに無くしてしまいましたが。 戦時下の国を訪れ、当事者の大統領に「必勝しゃもじ」のプレゼント。その評価を巡ってネット上の意見が真っ二つに割れました。 そこで私は、試しにツイッターでアンケートを実施してみました。 Q岸田首相がゼレンスキー大統領に送った必勝しゃもじについてどう思いますか? (回答数8692票) ① 素晴らしい。勇気をもらった。 35% ② 戦時下に恥ずかしい。 13% ③ もみじ饅頭の方が良かった。 11% ④ そもそも行くべきではなかった。 41% やはり意見が大きく割れました。本来なら、「良いとも悪いとも思わない」という答えが有るべきだったかもしれません。判断のつかない人は「もみじ饅頭の方がよかった」に入れたケースもあったようです。 「素晴らしい」と答えた人は「そもそも行くべきではなかった」と答えた人が41%もいたことに衝撃を受けたようですし、「そもそも行くべきではなかった」と答えた人は「素晴らしい」と答えた人が35%もいたことに落胆したようです。 「素晴らしい」と答えた人の考え方はこんな感じです。 G7の他の6カ国がウクライナに行っているのに、G7をホストする岸田首相が行かないわけにはいかない。 自由主義陣営に属することを旗幟鮮明にしたからよかった。 中露と決別の意を示したからよかった。 英字新聞の評価が良かったからよかった。 ウクライナの人たちに勇気を与えられて良かった。 ウクライナの人たちが喜んでくれたからよかった。 一方、「そもそも行くべきではなかった」と答えた方々の反応はこんな感じです。 「素晴らしい」と答えた人は国際情勢や米露関係、ロシア・ウクライナの歴史的背景を理解せず、テレビで流されるプロパガンダを信じているのだろう。 ロシアを改めて敵認定してしまった。 本来なら停戦調停のための訪問にすべきだった。 両者の違いは明らかに「情報として何を信じるか?」の違いだと言えるでしょう。 ロシアの国営タス通信は、岸田氏がウクライナ訪問時、ゼレンスキー大統領に「必勝」と書かれた広島名物のしゃもじを贈ったことを紹介し、日本の報道などを引用して「日露戦争時の兵士のお守り」と強調。現地メディアはロシアへの挑発と捉えたもようで「奇妙なプレゼント」と不快感をもって伝えました。(時事通信3月24日) 当然ですが、改めて敵認定されたのは間違いありません。 評価の判断は各人に任せるとして、ここでは私が考える日本人が絶対に知っておくべき事実を挙げておきましょう。 ① アメリカは一枚岩ではない。 今回の岸田首相のウクライナ電撃訪問を評価する人は、今回の戦争が独裁主義国家対自由主義国家間で戦われている戦争であり、日本は自由主義陣営側にいることを明確にした点で評価できると考えているようです。実際、ウクライナ戦争は、名目上はウクライナ対ロシアの戦争ですが、既に代理戦争(Proxy War)の様相を呈しています。つまり、本当に戦っているのはアメリカを中心とする欧米とロシアだというわけです。今回日本は確かに、日本は欧米側に付いていることを旗幟鮮明にしました。 しかし、ここでひとつ明確にしておきたいことがあります。それはウクライナの最大の支援者であるアメリカも一枚岩ではないということです。 今、ウクライナを支援するという名目で絶対に停戦させず、戦争を遂行させようとしているのはバイデン民主党ネオコン政権です。具体的に言うと、ホワイトハウスと国務省です。 軍トップのミリー統合参謀本部議長は既にこれ以上の戦闘継続でロシアを追い出すことは不可能なので、停戦を考慮すべきとの意見を複数回表明しています。 トランプを支持する共和党MAGA派は、これ以上のウクライナ支援に否定的です。トランプは、自分が大統領ならこんな戦争は起こさせなかったし、大統領に返り咲いたら簡単に終わらせることができると言っています。これはCPACで直接聞きました。 また、これも同じCPACでレディ・トランプことカリー・レイクにインタビューした際に直接聞いたことですが、バイデン親子がウクライナと腐敗した関係にあることは有名であり、そのようなウクライナをバイデンが支援する戦争にこれ以上莫大な税金をつぎ込むべきではないという意見が強くあります。 議会でも下院を奪還した共和党から、ウクライナに送られる莫大な金や武器が正しく使われているか検証すべきであり、検証できないままに支援を続けるべきではないという意見が出されています。 このように、アメリカ全体がウクライナ戦争を肯定し、継続することを支持しているのではありません。 ホワイトハウスと国務省には、トランプ政権で追い出されていたネオコンと呼ばれる人々が舞い戻り、彼らが望む好戦的な政策を遂行しています。彼らの多くは東欧系ユダヤ人であり、ブレジンスキー、オルブライトの流れである徹底的なロシア敵視政策を取っています。 その代表的な人物が、トランプが名指しで批判しているビクトリア・ヌーランド国務次官です。彼女こそ2014年のヤヌコビッチ政権転覆の工作者であり、彼女が行く所では必ず革命や戦争が起きるとさえ言われています。 彼らネオコンがウクライナ戦争の徹底継続を主張する理由は、ウクライナを助ける為ではありません。ウクライナに住んでいたユダヤ人はウクライナ人にも弾圧されたのであって、彼らの目的はウクライナを利用してスラブ民族同士を戦わせ、プーチン政権を打倒し、ロシアを弱体化させて分割支配することです。ウクライナ戦争は確かにロシアによる侵攻から始まりましたが、単純な正義の戦争ではありません。 そのような人々に支配されるバイデン政権は、ロシアとドイツを結ぶ海底ガスパイプラインであるノルドストリームを爆破した疑いを持たれています。公式にはノルドストリーム爆破の真犯人は明らかになっていませんが、外交・安全保障分野の調査報道でピューリッツァー賞などを受賞した米国の著名なジャーナリストであるシーモア・ハーシュ氏(85)が、2021年12月、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が米軍合同参謀本部や中央情報局(CIA)などの関係者を招集した会議で、「ノルドストリーム」に爆弾を装着して爆破する計画を決定したと告発しました。 米当局はアメリカの関与を否定していますが、アメリカがNATOの協力のもとに実行した可能性が非常に高いと多くの人が考えていますし、私もそう考えています。なぜなら、アメリカは以前からノルドストリームは欧州のロシア依存を増幅し、アメリカの影響力を低下させると考えていたうえ、バイデン自身が公然と「我々はノルドストリームを破壊することができる」と発言しているからです。 ノルドストリームは同盟国ドイツが管理するインフラですが、バイデン・ネオコン政権は同盟国が管理するインフラを爆破することに何の躊躇もありません。トランプは、次は中国と台湾で戦争が起こされるだろうと警告しています。ロシア嫌悪の極左大富豪のジョージ・ソロスもそのように予言しています。そうなれば日本も確実に巻き込まれます。 このように、日本はアメリカに歩調を合わせたつもりでも、アメリカにおける意見は多様であり、一枚岩ではないことを認識しておかなければなりません。 そして、そのようなバイデン・ネオコン政権の日本総督として君臨するのがランボーの異名をとるラーム・エマニュエル大使であり、官邸に直接指示を出していると言われています。岸田首相はエマニュエル大使の指示に従って動いているのであって、自発的に行動しているのではありません。その意味では、岸田首相にウクライナに行かない判断を下すことは困難だったでしょう。 ② ロシアは躊躇なく報復する 多くの日本人は「ロシアは劣勢を強いられており、ウクライナがロシアを追い出して勝利する可能性が高い」という西側の報道をそのまま流す日本メディアの報道を信じているようですが、前述の国防総省の指摘の通り、そうならない可能性も十分にあります。ロシアが最終的に東部ドンバス地方からクリミア半島に繋がる黒海沿岸の占領に成功して停戦となれば、バイデン・ネオコン政権の目論見は失敗に帰してしまいます。 結果として、気が付けば勝利したロシアと中国が一体化するという、日本にとって極めて危険な状況が現出してしまいます。さらに、中国がサウジアラビアとイランを仲裁したように、反米包囲網が着々と構築されています。元々、アメリカの中東政策は、アメリカが必ず守るから、石油の決済は米ドルで行うという取引でしたが、今後ドル以外の通貨での決済が広まれば、基軸通貨としてのドルの地位が危うくなり、それは直接アメリカの国力低下と影響力低下に繋がります。 中国は必ず台湾を併合する動きに出ますし、アメリカのネオコン勢力は台湾と日本を次のウクライナにしようとするでしょう。ウクライナではスラブ民族同士に戦わせましたが、今度はアジア人同士の殺し合いになります。 私は、習近平はぎりぎりまで間接侵略(サイレント・インベージョン)を駆使して台湾を陥落させようとすると予想しています。日米との軍事的衝突を徹底的に避ける方が賢いからです。具体的には来年2024年の台湾総統選まで、台湾の政界から財界、軍部の上層部まで、あらゆる階層への浸透影響工作を強化するでしょう。 しかし、間接侵略だけでは目的を果たせないと判断すれば、習近平はサイバー攻撃や海上封鎖に加えて、軍事的手段も決断するでしょう。その際に、自衛隊や米軍をけん制する為に、ロシアに北海道への軍事的挑発、または軍事侵攻を依頼する可能性があります。その際、中国に借りがあるロシアに断る選択肢はなく、躊躇なく攻撃してくるでしょう。 プーチンが秋田犬が好きな柔道家で親日的な側面があったのは確かですが、特別な人間関係を築いた安倍元総理は既にこの世にいません。バイデン・ネオコン政権は岸田政権に安倍元総理が築いたロシアとの関係を破壊させました。今やロシアは完全な敵国です。 さらに言えば、その頃に、プーチンがロシアの大統領であるかどうかわかりません。たまたまプーチンが安倍総理と親密な関係を築いただけで、ロシアの指導者は好戦的な発言をすることがしばしばです。 たとえば、国際刑事裁判所がプーチン大統領に逮捕状を出したことについて、メドベージェフ前大統領は「起こり得ない事態なのは明白だが、それでも想像してみよう。核保有国の首脳が、たとえばドイツを訪問して逮捕されたとする。これは何になるか。ロシアに対する宣戦布告だ」「(こうした事態になれば)ロケット弾などありとあらゆる物が、独連邦議会や首相府に飛来するだろう」と述べました。 このようなメンタリティのロシアの指導者にとって、安全保障を完全にアメリカに依存し、装備は最新でも一週間しか戦えない自衛隊しか持たないくせに、「必勝」のしゃもじを持ってウクライナを訪問して敵対姿勢を露わにした日本など機会があれば叩き潰して今度こそ北海道を奪ってやろうと考えても全く不思議はありません。プーチンが好きな人はそのような事態を想像したくないでしょうが、私はロシアは躊躇しないと確信しています。敵に遠慮する国ではありません。 ③ アメリカが撤退する時は焦土戦術を取る。 中国が間接侵略と軍事侵攻を駆使して台湾併合に成功し、アメリカが台湾と日本から撤退を余儀なくされる事態が発生した時、私はアメリカが焦土戦術を取る可能性があると予想します。具体的には次のことです。  台湾のTSMCの工場を爆破する。  日本の基幹インフラに予め仕掛けられたマルウェアを稼働させて、日本のインフラを機能不全にする。 オリバー・ストーン監督の映画「スノーデン」の中で、米国によって、送電網やダム、病院などの社会インフラに不正プログラムが仕込まれ、もし日本が同盟国でなくなったら不正プログラムが起動し、日本は壊滅するとスノーデンが証言するシーンがあります。 私は、アメリカはそういうことをする国だと思います。いや、そういうことを考えて実行する人達が存在する国だということです。このような最悪の事態も想定しなければなりません。 岸田首相のしゃもじ外交を評価するか否か。まだまだ考慮すべきことはありますが、少なくともこれらの事実を踏まえて判断する必要があります。日本はジャイアンに小突き回されるひ弱なのび太に過ぎず、極めて脆弱な立場にあります。 私のメルマガ読者には既知の内容ですが、アンケート結果が興味深かったので、参考までにあえて論点を再整理しました。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 本ウェブマガジンに対するご意見、ご感想は、このメールアドレス宛に返信をお願いいたします。 //////////////////////////////////////////////////////////////// ■ ウェブマガジンの購読や課金に関するお問い合わせはこちら   info@foomii.com ■ 配信停止はこちらから:https://foomii.com/mypage/ ////////////////////////////////////////////////////////////////

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