… … …(記事全文4,842文字)「パワハラ疑惑」で辞任に追い込まれた齋藤氏が,この度の兵庫県知事選挙で再選されました.
現下の民主主義制度を採用している我が国では,この結果は重く受け止めねばなりません.少なくとも,齋藤氏は「知事」の要職に就くことが決定されました.そしてその事実を受け止め,これからメディア上の論調や有識者達の発言内容が変わってくるものと予期されます.
(例えば,コチラ:https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202411170001830.html)
ただし,この結果は,あくまでも「知事を誰にするか」を決定するものであり,言うまでも無いことですが,「当選者に関わる真実」に関わる諸判断がこの決定によって影響を受けるものではなく,そして,受けるようなことがあってはなりません.
本稿では,その一点について検討をしてみたいと思います.
まずこの度の選挙の構図は「既存マスメディアvsSNS」と言われていますが,その件の「事実的経緯」は以下の様なものです.
(1)兵庫県の一職員から,齋藤知事のパワハラを告発する文書が,兵庫県警、報道機関4社、国会議員1名、県議4名,ならびに県庁内の通報窓口に提出された(3月12日付け).
(2)齋藤知事サイドは,その告発には「事実無根の内容が多々含まれ」ており,かつ,「嘘八百」を含むものであり,その外部告発行為は公務員として不適切な行為だと断罪し,当該告発者を「告訴」する準備を進めている旨を記者会見で発表(3月27日).その上で当該職員を特定するための徹底調査を庁内で行い,告発者を特定.それと同時に,当該告発者の処分を検討するために「弁護士を入れた内部調査」を開始した事を公表(4月2日).
(3)その後,同職員から今度は,兵庫県内の公益通報制度を利用し、庁内の窓口に疑惑を通報(4月4日)。
(4)さらにその後,「弁護士を入れた内部調査」を通して,「告発は核心部分において虚偽であり,告発文書は知事や職員に対する誹謗中傷であり、不正行為」と判断し,告発した職員について「停職3カ月の懲戒処分」を決定(5月7日)
(5)県が実施した調査で,「7人が知事や幹部のパワハラ、6人が知事や幹部への物品供与」を回答で指摘したという結果が公表される.(5月9日)
(6)その後,齋藤氏は,当該告発内容について,「第三者委員会」の設置を表明(5月14日).またその後,議会が告発内容の真偽を確認する「百条委員会」設置が決定(6月13日).
(7)記者会見で初めて,齋藤氏は告発内容を「全て否定」(6月20日).
(8)告発者が「一死をもって抗議する」「百条委員会は最後までやり通してほしい」という一文が入った陳述書を残し,自殺(7月7日).
(9)齋藤知事は告発内容の一つであった「おねだり」に関連してワインを受け取っていたこと認める(7月19日).ただしその後,それが「社交辞令の範囲」と釈明(7月24日).
(10)兵庫県議会は,全会一致で,齋藤氏を不信任を決議し,齋藤氏辞職.その後実施された知事選挙で齋藤氏再選(今に至る).
(以上の出典は,https://x.gd/mvkaIを基本にとりまとめています.このサイトには,各情報の出典も明記されていますので,これに準拠して概要をとりまとめました)
この一連の経緯で,法的に重要なポイントは,かの告発が「公益通報」に該当するか否か,という点です.もし公益通報であるなら,齋藤知事の「告発者捜し」や「告発者の処分」は公益通報者保護法違反となるからです.
齋藤知事は「後発された側」ですが,その「告発された側」である齋藤知事は,これを「公益通報」ではなく,「斎藤政権にダメージを与える、転覆させるような計画で、選挙で選ばれた知事を地方公務員が排除するのは不正な目的」の文書であると認識しているようです.そしてその根拠として,片山元副知事は,内部調査の段階で,当該職員のメールに『クーデターを起こす、革命、逃げ切る』というくだりがあったことを挙げています.
今回の選挙では,この片山氏の発言等が大きな影響を及ぼし(N国活動やSNSを通した各種の情報配信が功を奏し),
「告発は公益通報の類いではなく,単なる,齋藤政権を潰す不正なフェイクだ」
という認識を持つ有権者が多数派を占め,齋藤氏が勝利した,という結果になったわけです.
しかし,当方は,この齋藤氏のふるまいは「為政者」(Govener:知事)として許容できるものではない,と考えます.
なぜなら,今回告発されているのが「齋藤知事」の本人であるにも関わらず,その当の本人の齋藤知事自身が,「第三者」の意見を取り入れず,自分自身の知事としての権限を使って,本人の権限で「当該の告発はフェイクである」と断罪し,懲戒処分にしてしまっているからです.
この問題の本質はここにあります.
この当方の判断は仮にその通報が「公益通報」に法的に該当するものではなく,完全なる不正なフェイクであったことがこれから明らかになったとしても,変わるものではありません.
すなわち,この告発の「動機」が仮に片山副知事が主張するように「齋藤政権を潰すための意図」があったとしても,そして,その告発に「嘘」が多数含まれていたとしても,その告発の中に何らかの「真実」が含まれている「可能性」がある限りにおいて,その告発を,自らの権限で以て「断罪」することは,「公益通報者保護法」の精神の下,許されないものだと考えます.
そして,内部告発がなされた時点(上記の(3)の時点)で,その告発の中に何らかの「真実」が含まれている「可能性」があったことが強く疑われるからです.
そうだとするならそれは,「職権濫用」以外の何ものでもない,ということになるのです.
(この一点は…
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