… … …(記事全文4,343文字)世間からの強い反感を買っている所謂,自民党議員達の「裏金問題」ですが,その法的な内実は,「パーティ券収入不記載問題」です.
特定の政治家,あるいは(派閥等の)関連組織に収入があったにも関わらず,それが事務的に「記載」されていなければ,その不記載の動機や経緯の如何に関わらず,そのオカネは,その政治家(あるいは,その関連組織)が自由に使用しても誰にも分からないということになります.
つまり,「不記載」があった時点で,不記載になった経緯がミスであろう無かろうが,どんな経緯であろうが,兎に角その記載されなかったパーティー券収入は「裏金」となってしまうわけであり,これこそ「裏金問題」と呼ばれるものの本質であり,それはつまるところ,政治資金収入の不記載問題なのです.
そして,このパーティ券収入の不記載=裏金は,今,安倍派議員において多数取り沙汰されていますが,元総理の岸田氏の派閥でも生じており,また,現総理の石破氏においても生じているのです.
https://news.yahoo.co.jp/articles/b65c51bb249ea79531599c9bcb4431a2a76b2220
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/967926
石破氏も岸田氏もいずれも「事務的なミスだ」という説明で「言い逃れ」をしていますが,岸田氏や石破氏関係の不記載は,安倍派・二階派で取り沙汰されている「裏金」の問題と同様に,定義上,パーティ券収入の「裏金」問題であることに相違ないものなのです.
さて,この問題についてこの度石破氏はこの週末に,党幹部(森山幹事長,および小泉選対委員長)と協議し,選挙のための世論対策には「裏金議員」と呼ばれる人達に「罰」を与える姿勢を見せることが必要だという結論に至りました.
その経緯は下記記事に詳しく書かれていますが…
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA063DP0W4A001C2000000/
要するに,石破氏・森山氏・小泉氏はまず,
『どんな事情があったとしても収支報告書に記載されるべきものが記載されていない以上は、何もしていない議員とは同列には扱えない』
という合意を形成したとのこと.そしてその上で,
「不記載があった議員を公認する場合は,比例での重複立候補は不可とする」
「特定の条件を満たす議員については公認を認めない」
という方針を決定したとのこと.
その結果,おおよそ10名前後が「非公認」,43名が「比例での重複立候補を不可」となる見通しとなっています.
ここで重要なのは,党執行部は『どんな事情があったとしても収支報告書に記載されるべきものが記載されていない以上は、何もしていない議員とは同列には扱えない』と決めていたにも拘わらず,不記載があった石破氏や岸田氏が全く「お咎め無し」となっている点です.
つまり,今回の非公認や比例復活不可という「処分」は,いわゆる典型的なダブルスタンダードなのです.つまりそれは「自分にとって都合がよい処分は行うが,都合が悪い処分はやらない」という,単なるご都合主義(ないしはエエカッコシィ)で正義を振り回しているに過ぎない,不道徳極まりない詐欺的行為だと解釈する他ないのです.
では,なぜ石破氏はそのような詐欺のようなダブスタ処分を図っているのかと言えば,それは偏に,比例での重複立候補不可とされる43名の議員の内,実に41名が「安倍派」議員であることが原因だと考えざるを得ません.
そもそも,今回の決定を下した石破氏,森山氏,ならびに,石破政権の後ろ盾となっている岸田氏や小泉氏の後ろ盾の菅氏は安倍派を「政敵」と考えており,安倍派の弱体化を画策してきた人々です.
一方,現在の石破政権というものは,誰もが認める事実上の「菅・岸田の傀儡政権」です.
例えば,いわゆる「石破カラー」なるものが総裁になった途端出せなくなったのは,それが菅・岸田の思惑に反するものだからであるに過ぎません.
しかしながら,石破カラーの内,菅・岸田氏のお眼鏡にかなうものは,もちろん許容されます.というかむしろ「推奨」すらされる事になります.
今回の「裏金議員の比例復活不可」という方針は,まさに石破氏がやりたいことの内,菅・岸田にとって都合がよいものであったが故に決定できた,というに過ぎないものなのです.
もちろん,それをやると安倍派は強烈に反発し…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)