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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

世論分析に基づくと,「支持率」「勢い」「バンドワゴン効果」の視点から考えた場合の“現時点”の総裁選“最有力”候補は「高市早苗」氏である.

■■ 「日本の命運を分ける総裁選」を決する3つのファクター ■■

 

岸田氏の総裁選不出馬表明を受け,自民党総裁選挙の火蓋が切って落とされました.日程は,8月20日に正式に決まる予定ですが、既に9月12日告示、9月27日投開票の案が有力と報道されています.

 

この総裁選は,経済の視点からも外交力を含めた総合的国力の視点からも,コロナ禍,ウクライナ戦争,そして,世界的インフレの進行等の煽りを受けてますます激しく凋落しはじめた我が国日本のその凋落を食い止め,我が国の再生を図る上で,極めて重要な重大な歴史的意義を持つものとなります.

 

そうした背景を受け,この総裁選に向けての国民の注目は大きなものとなっているわけですが,果たして,一体誰が総裁,そして次期総理大臣として選ばれるのでしょうか…?

 

それを考えるにあたり,総裁選全体のプロセス(文末付録参照)を踏まえれば,次の三点が重要ファクターであることが分かります.

 

(1)新旧派閥の領主等の自民党有力者の判断

(2)自民党員の支持率

(3)国民の支持率

 

もちろん,今回の総裁選は派閥が麻生派を除いて解散しており,「(1)新旧派閥の領主等の自民党有力者の判断」の影響力が最小化されているとも言われていますが,実情を鑑みると,決してそうでは有りません.

 

例えば唯一派閥を正式に残存させている麻生氏は,正々堂々とその派閥を使って,特定候補者を支援することが可能な状況にあります.

 

同様に,菅義偉元総理もまた,その判断に従う国会議員を多数抱えていると言われており,菅義偉氏の意向で特定候補者を支援することが可能な状況です.

 

それ以外の旧派閥もまた,形式上は解散しているものの,「政策集団」などの名前で残存しているケースもあれば,再び集まりましょうという暗黙の約束が事実上,存在しているケースもあります.

 

そのあたりはまさに,「密室」で決定されていくプロセスですので,これについては,現時点では予想が困難な状況にあるのですが…こうした「有力者達の判断」に影響を及ぼす重要ファクターとして挙げられるのが「(2)自民党員の支持率」や「(3)国民の支持率」です.

 

有力者達が目指しているのはあくまでも「自分が支持する候補者が総裁選(ならびに,その後の衆院選で)勝利すること」(そしてそれを通して,その勝利者総理をコントロールし続ける状況を創出すること)です.

 

したがって,自民党有力者達といえども,決して「(2)自民党員の支持率」や「(3)国民の支持率」を完全に無視するわけにはいかないのです.

 

とりわけ今回は,表向きに派閥が存在していないという状況を受け,候補者が乱立することが想定されています.そうなると,国会議員票も割れてしまい,自民党有力者が思い通りに「国会議員票」を制御することが必ずしも容易ではありませんから,相対的に「(2)自民党員の支持率」や「(3)国民の支持率」の重要度が高まるという傾向も予期されます.

 

そして勿論,各議員がどの候補を「推薦」し,どの候補に「投票するか」を考える上でも,「(2)自民党員の支持率」や「(3)国民の支持率」は重要な要素となります.「勝ち馬に乗る事ができるかどうか?」というポイントは,各議員にとっても決定的に重大なファクターとなるからです.

 

ついては総裁選の行方を占うという主旨で,各総裁候補の支持者の「支持率」がどういう状況になっているのかを確認してみることにしたいと思います.

 

■■ 支持率トップ(8月時点自民支持層)は高市氏.7月一位の石破氏を抜き約6%差 ■■

まず,自民支持者を対象に含めた総裁選候補者の世論調査としては,おおよそ一月前の7月20・21日の産経新聞社・FNNの調査と,それから一月弱経過した8月16日の紀尾井町戦略研究所の調査があります.

 

この調査の結果の中でもとりわけ,「一般の国民」における支持率よりも総裁選により強く,直接的に影響する「自民支持者」に限った支持率に着目してみましょう.

 

――――【自民支持層 対象結果】―――――――――――――――

<7月20・21日調査>   <8月16日調査>

 石破茂   21.2%     高市早苗  19.7%

 小泉進次郎 13.0%     石破茂   13.9%

 高市早苗  10.6%     河野太郎  12.7%

               菅義偉   12.7%

               小泉進次郎 11.6%

               上川曜子  4.6%

――――――――――――――――――――――――――――――

    (※7月20・21日調査では4位以下は不明)

 

7月時点では,総裁選への出馬への意向を比較的に明確に示していたのは石破氏に限られていたものの, 8月16日は岸田氏が不出馬を宣言した後の時点で,石破氏以外にも高市氏を含めた多くの議員が立候補を示唆・暗示する発言を行っており,状況が大きく変わっていることがわかります.

 

ご覧の様に,7月時点で11%程度の支持率で3位に留まっていた高市早苗氏が,岸田氏が不出馬宣言を行った後の8月時点では,約21%の支持を獲得し,1位に躍り出る結果となっています.しかも高市氏は2位の約14%の石破氏に,おおよそ6%もの大きな差を付けています.

 

ちなみに,次に紹介するように7月調査を行った産経新聞は,一般対象の調査でその前の6月時点で高市氏の支持はより低い水準であったと報道していますが,それを踏まえると,高市氏は,自民支持層においても6月,7月,8月と時間を経るにつれてぐんぐんと支持を伸ばしてきていると考えられます.

 

■■ 一般国民において「小石河」は失速.高市氏が人気上昇中.■■

ところで,自民支持層の調査結果は限定的ですが,一般対象の調査結果はより広範に報道されており,以下の様になっています(6月調査は産経新聞社・FNN調査).

 

――――【一般 対象結果】―――――――――――――――――――

<6月17日調査> <7月20・21日調査> <8月16日調査>

 石破茂 16.4%   石破茂   24.7%  石破茂 15.1%

 小泉進次郎 14.6% 小泉進次郎 12.1%  高市早苗 11.8%

 河野太郎 8.4%   高市早苗  7.5%  菅義偉 6.9%

 高市早苗 6.3%   河野太郎  7.0%  小泉進次郎 6.8%

           菅義偉   5.4%  河野太郎 6.1%

           上川曜子  4.8%  上川曜子 5.3%

――――――――――――――――――――――――――――――

(※ なお,8月17日には女性自身の一般国民対象の調査結果が報告されているが,その順位は,河野氏と上川氏の順位が異なる以外は紀尾井町戦略研究所のそれと整合する順位)

 

ご覧の様に…

… … …(記事全文4,800文字)
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