… … …(記事全文4,930文字)日銀は金融政策決定会合で政策金利を0.25%へ引き上げると決めました。
これによって,借金をしている多くの方々,例えば,住宅ローンを組んでいる方や銀行からおカネを借りている各企業の方々は,(ある種の増税と同じようなかたちで)負担が増えてしまい,所謂「可処分所得」が減り,消費や投資を減らさざるを得なくなりました.
そして,多くの国民,企業は,実際におカネを使うよりも,預けておいた方がまだおカネが儲かるだろうと考える傾向が幾分なりとも拡大し,それを等して消費や投資が減ることにもなりました.
さらには,おカネを借りて消費や投資をしようと考えていた世態や企業は,そういう傾向を縮小させ,消費投資が下落することにもなってしまいました.
つまり,今日の日本は未だに消費や投資が冷え込んでいる状況下にあるのですが,この利上げによって,その状況がさらにさらに悪化し,我々の所得,賃金はさらにさらに下落することになったわけです.
まとめていうなら今回の利上げは,ただでさえ苦しくなりつつある我々の暮らしをさらに痛めつけるものとなるわけですが,それにも関わらず,大手新聞社は『日本経済は「金利ある世界」に本格回帰していく』などと,何やら良い未来が待っているかのような印象を与える報道を繰り返しています.
しかも,これについて岸田氏は「政府と日銀はデフレ型経済から新しい成長型経済への30年ぶりの移行を成し遂げるという共通の認識に立って、密接に連携している。本日の決定もこうした認識に沿って行われたものであると考えている」と述べています.
これは要するに,岸田総理,ならびに,植田日銀総裁は,金利を引き上げるということは,「デフレ型経済から新しい成長型経済への30年ぶりの移行させるために必要な対策の一つだ」と認識していることを意味しています.
しかも,この岸田発言は,『岸田総理は日銀に対して,金利引き上げを「指示した」』という事実を示唆するものでもあります.
なぜ,そう言いうるのかを,以下に解説いたします.
第一に岸田氏は,「政府と日銀が共通の認識に立っている」と主張していますが,そもそも日銀の植田総裁を決めたのは岸田氏なわけですから,対等に議論しあって方針を決めているのではなく,岸田氏の言う事を聞くということを前提に植田氏が総裁となっているわけです.したがって両者が連携しているということはつまり,岸田氏が指示し,それに植田氏が従っていると「解釈」できるわけです.
しかも,その「解釈」は,植田氏が,無理矢理利上げをすることを正当化するために,学者としてはあり得ない「ウソ」をついているという「事実」を踏まえれば,確実に正当なものと言わざるを得なくなります.
例えば植田氏は…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)