… … …(記事全文3,401文字)先日お話しした、北陸新幹線問題。
https://38news.jp/economy/28223
政府与党では今、敦賀から新大阪にどう繋ぐか、という議論にて、
「小浜ルート」
が決定され、既に環境評価のプロセスが始まっていますが、
敦賀まで完成した事を皮切りに、またぞろ、「米原ルート」が主張されはじめている、というお話しです。
総合的に考えれば、「小浜ルート」が圧倒的に合理的だというお話しを上記記事で解説したところですが、その最大の理由は、「米原ルート」では米原で乗り換えが必要となる一方で、「小浜ルート」は直通で東京京都大阪間が繋がる、という点です。
しかも、米原ルートは、米原―京都大阪間を、「東海道新幹線」を使わねばならなくなるのですが、その区間の「容量」が不足しており、その結果、北陸新幹線側は、「東海道新幹線の都合」に振り回される結果となり、十分に利便性の高いダイヤが組めなくなる、という点も大きなデメリットです(つまり、JR東海とJR西日本・東日本との調整の難航は必至なのです…)。
しかも、小浜ルートを整備すれば、山陰新幹線や関空新幹線・四国新幹線へと、その整備プランを拡張していけるという極めて重大なメリットがありますが、米原ルートにはそのメリットがありません。
つまり、米原ルートが決まってしまえば、事実上、山陰新幹線をつくる機運は事実上ゼロになってしまい、その整備の為のプロセスをまた一から始めねばならなくなります。
しかも、関空・四国新幹線の議論も、同様に「一から」始めなければならなくなり、結果、山陰新幹線や関空新幹線・四国新幹線ができなくなってしまうリスクが拡大すると同時に、仮に作ることが将来あるとしても、その供用時期が大幅に遅れることになります。
その結果、山陰、四国は(小浜ルートに比して)巨大な「経済被害」を被るのみならず、西日本全体、そして日本全体に「巨大経済被害」がもたらされることが危惧されるわけです。
しかも、米原ルートの方が工期が短いと言われていますが、小浜ルートは既に具体的な環境影響評価も始められており、かつ、関係各位による京都駅・新大阪駅の具体的検討も始められている様子が、既に報道されはじめており、近日中にその具体的な案も公表される見通しであると言われています。その点を考えると、米原ルートに変更された場合、これらのプロセスを全て一から始めねばならず、米原ルートの最大のメリットである「早期実現」のメリットも極めて限定的となると考えられる事になります。
しかもしかも、小浜ルートの事業決定はもちろん、「敦賀・京都・新大阪」の区間が一体的に決定されるべきですが、(ちょうど敦賀までの北陸新幹線において金沢までの区間だけ一足早く供用開始したように)敦賀・京都区間だけを「一足早く供用開始」をすることを考えれば、米原ルートの「早期実現メリット」もさらにさらに限定的になることとなります。
この様に考えると、米原ルートは確かに「安く」できるという財務省的なメリットはあるものの、それ以外の点では、さしてメリットもなく、国益上の巨大なデメリットばかりの代替案だという事になるわけです。
こうした事情から、政府与党の決定プロセスの中で小浜ルートが決定されてきたわけですが、この度、
・馬場伸幸氏(日本維新の会代表・衆議院議員)
・前原誠司(教育無償化を実現する会代表・衆議院議員)
・嘉田由紀子氏(日本維新の会・教育無償化を実現する会・参院議員・元滋賀県知事)
三名が、米原ルートにすべきだ、と主張し始めたということが、下記にて報道されました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4fb3ee4b861a4b14ffad414b4665f0ba0f46310a
上記記事を拝見しますと、彼らが反対している理由は、それぞれ以下の様なものでした。
まず、地元が京都市の前原氏は、京都市内で、北陸新幹線の京都接続について一部に反対の声があることから、その声を受けて反対している、とのこと。それはちょうど、八ッ場ダム整備が殆ど完成していたのに、一部の反対の声があったからという理由で、ダムの必要性を完全に度外視して無理矢理工事をストップさせた、というあの、「民主党のインフラ事業バッシング政治」の焼き直しそのものです。
前原氏には、自分がストップさせた八ッ場ダムのお陰で、利根川の結果リスクが東日本台風の際に回避できたのだ、という事実を思い起こし、真摯に反省し、小浜ルートにどれだけの京都の利益、国益上のメリットがあるのかを虚心坦懐ご検討いただきたいと思います。
馬場氏は、「米原ルートの方が早いので、その方が大阪・関西にメリットが多い」というのが理由のようですが、本記事に記載した、小浜ルートの圧倒的なメリットの大きさと、小浜ルートにおいて余分に必要となる時間の無駄について思いを馳せて頂きたいと思います。
嘉田氏は、どういう根拠で米原ルートを推奨しているのか今ひとつ判然としませんが、上記記事によれば、工期の短さと工費の安さだけに配慮してのことのようです。嘉田氏は以前、知事時代に滋賀県に新幹線の駅を新設するプロジェクトを潰した過去があるのですが、いわゆる「環境派」である嘉田氏は、公共事業はできればない方がよく、やるとしても安くて小さいものを好むという傾向があり、それが今回の反対の大きな理由となっているように思われます。
ちなみに、こういう傾向は嘉田氏だけでなく、前原氏、馬場氏、というか、民主党系と維新系の議員に共通する傾向であるとも言えます。この背後にはいろいろな思惑(例えば,森喜郎氏の意向等)があるやに思われますが、少なくともこの3氏は、「小さな政府がいい」「カネはからない方がいい」「兎に角国家プロジェクトは嫌い」という、民主党系・緊縮議員系の政治的イデオロギーの影響が濃密であると、筆者は考えます。
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)