… … …(記事全文3,542文字)当方これまでおおよそ100冊程度の書籍を出版して参りましたが、一番最初に出版した書籍が
『社会的ジレンマの処方箋 ~都市・交通・環境問題の心理学~』
https://in.24criterion.jp/24shaka2520_sns
という書籍でした。この書籍は今から二十年以上前の当方が三十代前半の頃に出版されたもので、現在では絶版となっていたところ、この度、是非とも現代の日本国民の皆様にもお読み頂きたいという思い出、「復刻」されました!
この書籍は、デフレや移民問題、治安の悪化等の今日的問題から、渋滞、過疎/過密、環境公害問題等の慢性的問題に至るまでのあらゆる社会問題の背後には、
公と私が対立する「社会的ジレンマ」
という社会構造が存在することを明らかにした上で、その「社会的ジレンマ」を如何にすれば乗り越えられるのかの「処方箋」を論じた書籍です。
この社会的ジレンマとは、上述のように「公と私が対立する」状況で、要するに、
「私的にはこうしたら得するけど、社会的には損害がでてしまう…
一方で、私的にはこうしたら損するけど、社会的にはそれが得策だ」
という社会構造を意味します。例えば、
・皆がオカネがもったいないからとケチになると(=「私」が得する行動))
内需が減ってデフレになって皆もっと貧乏になる(=「公」のダメージ拡大)
・各企業が人手不足だからと移民を受け入れると(=「私」が得する行動)、
移民だらけになって日本はエライことになる(=「公」のダメージ拡大)
・皆が警察にバレないならワルイことをやっちゃおうとすると(=「私」が得する行動)
治安が悪くなって皆がメチャ不幸になる(=「公」のダメージ拡大)
等がそれぞれ、「デフレや移民問題、治安の悪化等の今日的問題」です。つまりこれらの問題は結局、皆が「私」を優先するから「公」に大きなダメージが拡大し、結局皆が「私」の視点から大損する…という問題なのであって、これらは全て、社会的ジレンマなのです。
ジレンマとはもともと「あちらを立てればこちらが絶たず…」という(二律背反)状況を言うのですが、それが公と私の間にある、というのが、この社会的ジレンマだという次第。
さて、当方、20代の頃、日常生活や交通についての様々な「行動」に着目した計量経済学の研究で博士をとった直後に、その研究をさらに拡大すべく、スウェーデンに「心理学」を学びに留学しました。
そこで出会った概念がこの「社会邸ジレンマ」という概念でした。
当方が驚いたのは…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)