… … …(記事全文3,817文字)岸田首相は11日午前 日本時間12日未名アメリカ議会の上下両院合同会議で演説しました。今朝のチャンネル桜のフロントジャパンというネット番組にて、昨日の岸田首相の米国議会での演説が、如何に酷いものであったのかを解説いたしました。
ついてはここでは、そこでお話しした内容を改めて、文字起こしし、抜粋、編集しつつ下記にご紹介したいと思います。
- Youtubeは、コチラをご参照くださいhttps://youtu.be/4KP1QKoQqiU?t=1197
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まず岸田さんの演説は、原稿を読まずに、比較的ちゃんとした英語をつかっておられるので、中身について頓着しないで、あれを見ると好感を持つ方は多いと思います。実際、SNSでも、岸田さんを賞賛する声は多いようですね。
でも、中身をじっと聞いていると、「ぎょっ」とするようなこといっぱい言ってて、「この人、全然もう、あかんわ…」と思いましたね。
一般の方はなかなかそのあたり分からない方も多いかも知れませんが、これまでの歴史や大局的状況を踏まえて彼の演説の中身を批評すると、日本を地獄に導く最悪の演説だった、ってことが見えてくる、そういう代物でした。
ちょっとそのあたり、じっくり解説してみようと思います。
まず、全体のストーリーはこういうものでした。
「アメリカは世界の警察として世界の秩序を守ってきた。でも、最近は、中国の台頭やロシアの戦争等によって、米国の苦労も随分増えてきており、米国も困ってきている。だから米国の1番の親友である我々日本が友達としてあなたのこと助けてあげる。軍事的にも経済・産業的にも、日本が助けてあげる。」
まぁ、酷い内容だったんですが、この演説を聴いた後にまず最初に僕がやったのは、改めて安倍さんの米議会での演説をもう1回読み返すっていうことでした。
なぜかっていうと、あの日米の戦争についての言及が皆無なのが凄く違和感があったんです。
で、安倍さんはどうだったかを確認したんですが、安倍さんは日米の戦争のことをたっぷりと語っている。我々は戦った過去があるけれども、ああやって戦い、そして、融和し、これからの未来を作ろうという、あの第二次大戦を一応踏まえた上、現在と未来の日米について論じている。
ちなみに僕は、原爆を落とされた経緯を踏まえれば、こうやって安倍さんのように語ること自体が問題だとは思いましたし、今でもそう思っています。が、それでも、一応は、あの戦争の過去を踏まえた上で日米関係を作ろうという話しになっている。
ところが、岸田さんは原爆を落とされた話どころか、日米の戦争の話が一切ない。
ちょうど「進撃の巨人」の物語で、人類がなぜ壁の中に住んでいるかを(王によって記憶を飛ばされた結果)誰も覚えていない、というような状況を前提とした話になっている。
でも、あの進撃の巨人の物語っていうのはそんな記憶喪失ではいかんのだて言って、エレンがどんどんどんどん戦って深掘りしていって、最終的に記憶を取り戻し、未来を切り開く、っていう話になっている。岸田さんの今回の演説は、そういうエレンがやった物語とは完全逆の、過去完全に忘れるということを前提にしてるんですよね。
これでは「まっとうな未来」なんて絶対につくることはできない。
もうその大前提が、(僕にとっては大きな不満を感じていた)安倍演説なんかよりももっともっとレベルの低い、最低最悪のものとなっている。
しかも、岸田氏は戦争について一切言及為ない上に、次のようにも述べています。
「日本は長い年月をかけて変わってきました。第2次世界大戦の荒廃から立ち直った控えめな同盟国から、外の世界に目を向け、強く、コミットした同盟国へと自らを変革してきました。」
これを耳に為たときにもひっくりかえりました。
戦後直後の日米関係は、「同盟」なんかじゃない。GHQに占領されとったんです!
しかも、未だにその占領は続いている。横田も沖縄も横須賀も占領されっぱなしなわけです!六本木という東京のど真ん中にも、米軍基地がある!!
しかも日米合同会議があって、米軍が日本の政府組織を、国会や首相官邸に何のお伺いもたてずに自由に使える体制が今もなお残っている。そのことについての現実認識が全くない。
だから、岸田さんが言うような「対等なパートナー」と言い得るような状況には、未だに全くない。
僕がアメリカ人だったら、こんなこと総理が米国議会で演説してたら、もう確実に鼻で笑うでしょうね。
以上が全体的な、岸田演説に対する僕の第一印象です。要するに、歴史観も大局観も何もない。真実の歴史や大局的状況を全て無視し、薄甘い皮相的なタテマエの物語で、米国に媚びを売っている…そう解釈するしかない代物です。
さらに今回の演説、聞いているといくつも耳を疑うようなメチャクチャな事をいくつも言っている。
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)