… … …(記事全文3,315文字)静岡県の川勝平太知事が一貫して、「水問題」を盾に反対し続けた中央リニア新幹線。その川勝氏の反対の影響でJR東海は東京名古屋開通を裁定でも7年間延期せざるを得なくなったと公表しました。
当方の京都大学藤井研究室ではこれまで、全国各地の新幹線や高速道路などの交通インフラ整備による経済効果を、「MasRAC」と呼ばれる筆者等が国土交通省と共に開発したマクロ経済シミュレーションモデルを用いて様々に推計してきたのですが、その中の一つにリニア新幹線の経済効果を推計した研究があります。
https://38news.jp/archives/04985
この研究は、「名古屋と大阪のリニア開業による経済効果」を推計したものですが、その結果、年間7兆円の経済効果があるという結果が示されています。これは一日あたりで言えば約200億円となります。
川勝氏が延期させたのは東京名古屋間のリニア開業ですが、名古屋までの開業が遅れれば大阪までの開業も遅れる、と言うことになりますから、名古屋までの開業が一日遅れることで、裁定でも200億円の経済損失が生ずると言うことになります(無論、東京・名古屋間の開業による経済効果もありますから、実際には合計でその倍以上の4~500億円程度の損失になると考えられます)。
何にしても、川勝知事は、知事権限を使ってリニア反対をし続けたことによって、国民は一日あたり200億円ずつ所得を失っていくと言う凄まじい被害を日本国民に与え続けたのです。ちなみに7年遅らせたということは、合計で約50兆円の経済被害を日本に与えたという事になります。
川勝氏はその責任を少しでも感じているのでしょうか?(無論、何も感じてないでしょうね…涙)。
…ではなぜ、川勝氏は反対したのかというと、リニアのトンネルを掘ることによって大井川の水量が減り、静岡県民に被害がでるというのが、「表向き」の「公式」の反対理由。
しかしそうした反対があったので、大井川に流れ込む水の「バイパス」トンネルを作って、水量が減らない対策をJR東海は打ち出しましたが、それでも川勝氏はその「工事」の間、水が減るだろ!という理由でやはり反対。JR東海はそれを受けて、工事期間中にダムの水の「水利権」を静岡県のために購入し、静岡県民に被害が出ない対策を提案しましたが、それを受けてもまた別の理由をつけて反対…と言う恰好で、技術的にどのような対策を講じても、川勝氏は反対理由を次々と支離滅裂に変えていき、反対を取り下げなかったのです。
川勝氏のこの態度はもちろん単なる不条理な態度そのもの。単なる反対のための反対であり、反対するための理由をこじつけて「いちゃもん」を言い続けているというようにしか解釈できないものでした。
しかし実態は、川勝氏が公式に表明している反対理由は単なる「嘘」であり、表だっては口にすることのできない「別の理由」で彼は反対しているのだ、ということが関係者の間では常識のように知られていました。
表だっては口にすることのできない「別の理由」とは何かというと、川勝知事が知事選挙で勝利する上で決定的に重要な後ろ盾であったスズキ自動車の会長であった鈴木修氏が、リニアに反対していたから、というもの。
例えば下記写真は、川勝氏が知事辞任を表明した直後に、取材された鈴木修氏が発言した内容をとりまとめたもの。ここに記載の通り、「私はリニア反対」と発言していることが確認できます。
つまり、鈴木氏は川勝氏を知事にさせ、そして、自分が反対しているリニアに反対させ、その建設を阻止しようとしていたと言う次第。いわば川勝氏は鈴木氏に道具として使われていたわけで…だから川勝氏は、選挙で応援してもらいたいものだから、理屈なんてそっちのけで兎に角リニアにいちゃもんをつけて、その建設推進の邪魔立てをしていた、という構図があることが、記者達の間では「常識」として知られていたわけです。
では、鈴木氏はなぜリニアに反対していたのか、というのは…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)