… … …(記事全文2,669文字)本日とあるところで、「アベノミクス」を総括いたしました。植田日銀総裁の利上げが、事実上の「アベノミクスの終焉」を示唆するものあったからです。
何回かに分けて、「総括・アベノミクス」をご紹介します。
是非、ご一読下さい。
「異形の子」として生まれたアベノミクス
日銀の「マイナス金利解除」は、世論に大きな衝撃を与えた。これは要するに、前黒田総裁が安倍内閣との連携(アコード)を前提として始めたいわゆる「アベノミクス」の一環として進めてきた「異次元の金融緩和」の「終わり」が始まったのである。アベノミクスとは要するに、市中で流通するマネー量を増やし、それを通してデフレ脱却を果たさんとするものだ。だから、政府財務省は減税と支出拡大から構成される「積極財政」を行う一方、日本銀行は利下げと各種の債権の日銀買い取り(いわゆる買いオペレーション)から構成される「金融緩和」を行うことが進められた。
これは「アベノミクス」という固有名称で呼ばれてはいるものの、現下の日本経済の様な長期の需要不足に伴う不況下では、どの国もが行う当たり前の教科書的対策だ。それに対して何やら特別なものであるかのような「アベノミクス」なる名称が付与されたのは偏に、日本では長らく、デフレ不況下で求められる緩和的な財政金融政策が全く行われておらず、そうした当たり前の対策が「非常識」なものと見なされてきたからに他ならない。そんな中でその当たり前の事を当局にやらせようとすれば、それが「新しいもの」だと認識させることが必要となる。そんな不条理状況の中の苦肉の策として、「アベノミクス」という仰々しい名前が付与されたのだ。いわばアベノミクスは(普通とは違う怪しい形・姿をした)「異形」の子として産み出されたのである。
「醜いアヒルの子」のまま葬り去られるアベノミクス
繰り返すが、デフレ(あるいは、現下のスタグフレーション)において緩和的な財政金融政策を行うのは当たり前の話であり、至ってスタンダードな王道的政策である。しかし、邪説が支配する日本ではそれは「異形」の者扱いされる。かくしてアベノミクスは、美しい白鳥がアヒル社会で醜い醜いと蔑まれる「醜いアヒルの子」だったのだ。
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)