… … …(記事全文2,957文字)今回自民党総裁の岸田氏をはじめとして自民党議員達の「裏金疑惑」を巡って開催された政倫審なんて、強制力も無いし、任意だし何の意味も無い、という意見がしばしば言われる。
今回開催された政倫審の審査の模様を、見ている限り、「何の意味も無い」という意見は的を射たものではある。
しかし、本来的に言うなら、政倫審に意味が無い筈がない。岸田文雄氏ら「疑惑の被疑者」として出席した議員達の振る舞いのせいで政倫審が失われてしまったものの、本来的には政倫審には意味がある。
そもそも政倫審は、「国会における倫理の維持・確立」を果たすことが目的であり、その目的は誠にもって重要なものなのだ。そして、疑惑の被疑者達が誠実に振る舞いさえすれば、政倫審は、その目的を果たすことができるのだ。
そもそも今回の政倫審の目的は、「裏金」があったことがハッキリしている以上、
「なぜそんな裏金をつくったのか?」
「その裏金を何につかったのか、あるいは使おうとしていたのか?」
「その裏金、誰からもらったのか?」
等について説明し、そこに潜んでいた「非倫理性」を明らかに、その非倫理性を国会の場から除去せしめることだった。
しかし、例えば岸田総裁からは、
・単なる事務のうっかりミスでの未記載だった。
・政治活動に活用してきた/する予定だった。
・パーティ券20万以下は、購入者は不明。
・昔のことは分からない
ということ以上の発言はなかった。これらは全て、予算委員会で何度も何度も岸田氏が繰り返してきた説明だった。野党議員や多くの国民は、この予算委員会での説明について、
「嘘つけ! 知ってなかったわけないだろ! パーティ出席者くらいだいたい分かるだろ! 政治活動に使ってきたっていうなら、全部、説明してみろ!」
という激しいツッコミを入れてきたのだが、それにも関わらず、政倫審の場でもそういうツッコミに対する対応は一切無く、発言内容を一切かえなかったのだ…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)