… … …(記事全文3,605文字)経団連は「財政再建のためには必要だ」として、一貫して消費増税を主張していますが、実際には「自分たちの負担を減らす」という理由のために消費増税を主張しているのだ、と昨日解説しましたが、彼らが消費税を主張するには、これとは別のもっと「積極的」な理由があります。
実は彼らには、「消費税が増税されればされるほどに儲かってしまう」というメカニズムがあるのです。
そのメカニズムは、消費税における「輸出還付金」という仕組みによるものです。
それは、次のようなものです。
消費税というものは、国内のマーケットで販売した時には支払った人達に払って貰うことができるという税金、として運用されています。しかし、輸出企業の場合は、消費税を支払ってもらえない、という事態が生じます。なぜなら、「輸出」してしまった商品は、国内マーケット以外で販売したということで、その輸出品を買った(外国)人から、消費税を支払って貰うことができないからです。
ところが、輸出企業がその輸出品を作るために買った原材料を日本国内のマーケットで購入した場合、原材料購入の時に消費税を支払っている、ということになります。
したがって、輸出企業の場合、原材料を国内で購入する時には消費税を払っているのに、顧客である海外の人からは消費税を払ってもらえない、という事になります。
これでは不平等だということで、「輸出企業が、輸出品を手に入れるために、日本国内で支払った消費税」を全て「政府は支払ってあげる」(還付する)という制度を、政府が作っているのです。
これが「輸出還付金」という制度、です。
ちなみに、経団連に入っている大企業は基本的に全て、大量の輸出をしている企業達ですから、多くの還付金を政府から支払って貰っている事になります。そして、その還付金の金額は消費税率が上がれば上がる程、増えていく事になります。
これこそ、経団連が消費税率を上げる第二の、そしてより本質的な理由です。つまり、経団連は、より多くの還付金を貰いたいからということで消費税増税を主張しているのです。それによって経済が冷え込もうが低迷しようが貧困が広がろうが格差が拡大しようが知ったことではない、という次第です。
しかし、読者の中には、「ただ余分に払った消費税を後で返してもらっているだけなのだから、還付金は正当ではないか?だから、輸出企業は別に還付金欲しさに増税を主張しているのではないのではないか?」と感ずる方もおられるかも知れません。
しかしそういう認識は、残念ながら、大間違い、なのです。
実態として言うなら、還付金制度とは、極めて不当な制度なのです。
この点を理解するには、経団連大企業と下請け企業との関係を考えることが必要です。
まず、大企業達が原材料を仕入れる企業は基本的に…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)