… … …(記事全文3,281文字)この週末、関西電力が整備した「黒部ダム」を中心とした、黒部第四発電所の建設のためのインフラ群である「くろよん」に視察に行って参りました。
この「くろよん」の整備事業は、「黒部の太陽」という、石原裕次郎と三船敏郎という昭和の二大スーパースターが初共演した、空前の大ヒット映画の題材となった大土木事業ですので、年配の方を中心によくご存じの方も多いのではないかと思います。
ちなみにこの映画は、その後も何度もリメイクされておりましたし、また、そのプロジェクトを巡っては、平成期には、中島みゆきの大ヒット曲「地上の星」をテーマ曲とした人気番組であったNHKのメンタリー「プロジェクトX」でも大きく取り上げられたことで、「くろよん」は幅広い世代にも一定知られているところではないかと思います。
当方も、「くろよん」には、大学生の頃に講義で耳にして以来、是非行ってみたいと長年思っていたのですが、なかなか機会に恵まれず、行けずじまいになっておりました。日本有数の険しいアルプスの山岳地帯の奥深くの黒部渓谷まで行くには、それなりの時間が必要だったからです。
ですが、この度ようやく、関西電力さんに特別にご対応頂く形で、視察に行くことが叶いました(ご対応頂いた、関西電力のU部長、本当にありがとうございました!)。
今回のルートは、おおまかにいって、富山の「北陸本線」から出発し、「くろよん」のある黒部峡谷に入り、最後は、長野の「大糸線」にまで抜ける、という「通り抜け」ルートです。
まず、富山の宇奈月温泉で一泊し、そこから「黒部渓谷鉄道」で、北アルプスの山中に分け入ります。
この黒部峡谷鉄道はもともと関西電力(ならびに、その前身企業)が、黒部川に第一、第二、第三のダムと発電所等を作り上げるために整備したもの。ダムや発電所をつくるためには資材を運ばねばならず、そのための輸送路として、黒部川沿いに創られたのです。
今は、関西電力から独立した鉄道会社となり、観光目的で運用されているものですが、もともとが発電所建設のための鉄道だったということで、美しい黒部峡谷80分の道中、素晴らしい黒部峡谷の雄大な自然の中に、数々の発電所やダムを拝見していくことができます。
そもそも、黒部川は日本の中心部にそびえ立つ北アルプスから一気に日本海に向けて流れ出る川ですから、もの凄い高低差があるのです。そして、北アルプスには冬期、数十メーターという雪が積もる大豪雪地帯ですから、春から夏に向けて、凄まじい量の雪解け水が流れ出ます。膨大な水が一気に高い山から流れ落ちていくということで、「水力発電にうってつけの川」だったのです。
そうした地理的条件が整っているということから、大正時代から、官民合わせた様々な人々の手によって水力発電所をつくる大土木プロジェクトが進行していったのです。
さて、そんな土木プロジェクトの痕跡を一つ一つに思いを馳せておりますと…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)