… … …(記事全文2,715文字)なんとも悲しい話しですが…これが現実です。
『論文ランキングで、イランが日本を追い抜く』(アラブニュース・ジャパン、R5年8月12日)
日本の科学技術力はかつて、世界トップランクに位置していました。筆者が90年代初頭、学者の道を選択したころ、日本の学術上の敵はアメリカだけであり、多くの欧州諸国と互角、あるいはそれ以上のレベルで、欧米以外のアジア諸国などとは比較にならないくらいに圧倒的にレベルの高い研究を多数行っていました。
実際、自然科学分野で国際的に注目される引用回数「トップ10%補正論文数」(分数カウント:要するに、引用回数が多さでトップ10%に入っている論文の数)で、1980年代から1990年代にかけて、日本はアメリカ、イギリスに次ぐ世界第三位を誇っていました。
英米人は英語論文「だけ」を出版し、日本では英語論文だけでなく日本語論文も数多く出版しているにも拘わらず、世界第三位のランキングだったということは、実質上、世界一位、あるいは二位の水準にあったといっても過言ではありません。
例えば、当時20代の当方は、指導教官がアメリカで学生から教授になったUC Davisのアメリカ人教授であったこともあって、世界的な学術界で様々な研究発表、論文発表を繰り返し、20代にして文字通り、当方の属していた学術分野における世界を代表する研究者の一人となっていました。が、これは当方の優秀さ、というよりもむしろ、90年代当時の日本の学術界全体の優秀さを示すエピソード。こうした勢いが、90年代の日本ではあらゆる分野において見られていたわけです。
ですが今から思えばそれも、はるか20年、30年前の話…。
今となっては、当時見る影も無かった「イラン」にすら、学術論文の評価ランキング(トップ10%補正論文数)で追い抜かれてしまったのです。
その凋落ぶりを示すグラフがコチラ。
坂道を転げ落ちるとはまさにこのことですね…。
世界第三位、事実上世界一位あるいは二位だった科学技術立国ニッポンは、今や、イランのみならず…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)