… … …(記事全文3,066文字)一昨日の金曜日から明日月曜日にかけて、当方が編集委員を務めている学術誌『実践政策学』の企画で、編集委員の先生方と「隠岐」に視察に参っております。
この『実践政策学』という雑誌は、公益を資する公的な「実践」、例えば、まちづくりや地域づくり、あらゆる公益のための地方や中央政府の行政等の「実践」をサポートするためのあらゆる種類の「学術論文」を掲載するというもの。
この学術雑誌は、一般的な日本の学術雑誌が「学会」が作られた時に、その学会の活動の一つとして創刊されるものであるのと一線を画すかたちで、当方含めた4人の学者が、日本にはこういう雑誌がなければならない、という志をもって創刊されたものです。
4人の学者、というのは、以下の四人です。
委員長 石田 東生(筑波大学大学院システム情報工学研究科・教授)
委 員 桑子 敏雄(東京工業大学社会理工学研究科・教授)
藤井 聡(京都大学大学院工学研究科・教授)
森栗 茂一(神戸学院大学人文学部・教授)
石田先生は「土木」の先生で、日本の土木計画研究、国土政策研究の泰斗のお一人。大学は異なりますが、当方の学術界における直接の先輩にあたります。全国のくにづくり、地域づくりの各種プロジェクトの実践の最前線で様々な実践、研究、教育をされてきた方。
桑子先生は哲学者。東京大学を卒業後、哲学研究を重ねながら、その中で哲学研究の一環として、まちづくり実践に参与。徐々に、その哲学的実践、実践的哲学を拡大し、全国各地のプロジェクトを主導。代表的なプロジェクトとして、出雲大社の参道である神門を、文字通り、閑古鳥状態から活力有る参道へと再生させるための取組が挙げられます。
https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_00321/
森栗先生は民俗学者。森栗先生もまた、多くの一般的な民俗学者と一線を画し、一般的民俗学が「常民」(農山村の農民)を対象とする一方、「都市住民」を対象とした民俗研究を重ね、その一環として地域づくり、まちづくりに直接参与しておられます。
要するに、以上の三人と当方が、「既存」の土木学会、哲学会、民俗学会の学会活動や学術雑誌が、本来の公的機能を失い、それぞれの学会組織の学者達の就職活動や自己満足のためだけに存在する下らないものに成り下がってしまったことに辟易し、本来のそれぞれの学問がなさねばならぬ学問を奨励し、発展させるための雑誌を作らねばならない…という志でつくったのが、この「実践政策学」という雑誌だったわけです。
換言しますと、今の学会活動は、それがつくられた時の使命感や志を失い、その学術誌がその学会の単なる「生命維持装置」に成り下がってしまい、真面目に志をもった学者達が、どれだけその学会内で立派な仕事をしていても(というよりもその仕事が立派であれば有るほどに)どんどん学会から閉め出されてしまう状況になっていたわけで、そうやって放浪する各界の泰斗達が個人的なつながりだけで作った雑誌だったわけです。
ちなみに、この実践政策学のエディトリアルボードに、今回、京都大学で経済思想をされており、当方が編集長を務める表現者クライテリオンの編集委員でもある柴山桂太氏が新たに第五番目の編集委員として参画されることになりました。
ついては、この実践政策学は、今後は経済思想、政治思想にもそのウィングを広げる形で発展することを今、企図しているところです。
…さて、そんな「実践政策学」のエディトリアルボードでは、ことある毎に集まってあれこれ話しをしているのですが、その中で、今度是非一度、皆で隠岐にいってみようじゃないかという事になりました。
実践政策学の四人の立ち上げメンバーは、それぞれ個別に隠岐とのつながりを持っていました。石田先生は国交省道路行政の関連の地域活性化の仕事で、桑子先生は隠岐の中心地・西郷のみなとまちづくりの仕事で、森栗先生は指導した学生のIターン先として、そして当方は当方のお気に入りの磯釣り場の一つとして(笑)、隠岐とつながりがあったわけです。
特に、今、桑子先生が勧める、西郷のみなとまちづくりがいよいよ加速し始めているということで、その現場を視察することを中心に、隠岐の場にいって、いつもの議論を進めてみようということになったわけです。
で、その隠岐でどんな事があったのかというと…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)