… … …(記事全文3,219文字)金曜に入った隠岐で四日間、ようやく京都に戻って参りました。前回のメルマガでもご報告差し上げましたが、ホントいろんな事が目からうろこ、な体験がありました。
そもそもその地では京都や東京での日常空間の完全に「外側」の時空が流れており、かの日常空間の内側にいると、何やら当たり前だと思われていることがいかに当たり前でないのかが、よくよく分かるように思いました。
今回のこの四日で、実に多くの「神社」に行って参りました。
隠岐には何度も来ているのが、ほぼほぼ釣り目的だったので、折角の隠岐滞在でもほとんど何も見て回っておらず、気付いていなかったのですが、隠岐というのはもの凄い数の神社があったのです。
よくよく考えれば、隠岐といえば、あの出雲大社で有名な古代・出雲の勢力圏。ですから神社が多くあるのも当たり前、なわけです。
正式に全国の神社のリストがまとめられたのは、西暦927年編纂の「延喜式神名帳」(えんぎしき じんみょうちょう)。その中には全国の2861の神社が掲載されています。で、その内の1割強の353社が、格式の高い「大社」で、残りの9割弱の「小社」と区別されています。
ただし、全国353の大社の約4分の3内の264大社が、都およびその周辺エリアである奈良や京都、大阪といった機内(および宮中と京中)の「大社」で、それ以外の全国各地(機外)にある「大社」はわずか89社しかありません。
ただし、機内の神社の多くが「大社」に認定される一報、機外の神社比較的冷遇される傾向があってほとんど「大社」に認定されない、という傾向があるのです。
実際、機内の「大社」率は38%(703社中264社)であった一報で、隠岐を含めた機外の「大社」率は、その十分の一程以下のわずか3.5%(2511社中89社)に過ぎません。
つまり機外の「大社」というのは、全国の神社の中でもレアな存在で、よほど重要なものにだけ与えられる社格だったわけです。例えば、「出雲大社」等の、超重要なものだけが「大社」認定されていたわけです。
さらに言うと、この機外の中には、伊勢神宮がある伊勢、熊野本宮大社がある紀伊、という朝廷と縁の深い国も含まれていますから、その2国を除いた、朝廷と関連の低い地域(以下、これを畿内圏外、と呼びましょう)の「大社率」はわずか2.6%(2227社中58社)に過ぎません。
で…そんな貴重な「畿内圏外の58大社」の内、隠岐に大社が実に4つもあるのです。日本朝廷の中心的影響圏外の全国各地に58社しかない大社の約7%もの大社が、隠岐という小さな離島に鎮座していたのです。
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)