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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

石破氏・菅氏・岸田氏に今、一番理解して欲しい話 ~緊縮や自粛は必要。でもやり過ぎれば日本は確実に「自滅」します~
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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

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昨日、安倍総理が辞任を表明されました。当方個人も参与として勤務した6年も含めた8年足らずの期間―――その内容について様々なご評価があるところだと思いますが、まずはお疲れ様でございましたと申し上げたく存じます。

そして今、我々国民の間の最大の関心事は、次の総理が一体誰になるのか、という一点。今、石破氏、菅氏、岸田氏といった名前が取り沙汰されていますが、一体だれが選定されるのかはさておき、本日はその新総理に、一体どういう政治課題に取り組んで貰いたいのか、という一点についてお話ししたいと思います。

結論から申し上げますと、筆者は今、日本を確実に自滅に導く過激な「緊縮」と「自粛」の暴走を止め、適切な財政と感染症対策を新総理にはお願いしたい、と強く祈念しております。以下、順をおって、お話ししたいと思います。

そもそも、財政における「緊縮」も、感染症における「自粛」も、それぞれもちろん必要であることは論を俟ちません。でもだからといって、兎に角常に緊縮/自粛してりゃいい、というわけではありません。

過ぎたるは及ばざるが如し、緊縮/自粛「不足」が国益毀損をもたらすこともあると同時に、「過剰」な緊縮/自粛が同じく国益毀損をもたらすこともあるのです。

まず、「自粛」について。

そもそも自粛「不足」で人が大量に死ぬというのは、例えば、イタリアとスペインのサッカーチームが欧州チャンピオンリーグの決勝戦で激突し、試合後に一晩中大騒ぎし、一気に感染が爆発したというのが、その典型例。彼等はサッカーを重視し、コロナをなめたが故に自粛「不足」に陥り、それが両国における5万人、6万人という感染死に繋がったと解釈することもできる訳です。

だから、自粛が全く不要だというわけではないのです。ですがだからといって、自粛の「やり過ぎ」なるものがあるのも事実。

例えば仮に皆が「10割自粛」をやれば、医療も食糧も全てストップし、人々はコロナで死ぬか餓死するかになってしまうでしょう。だから、「人が生きていくため」には、ある程度社会経済が回っていないといけないわけで、それを越える自粛をさせるのは「過剰自粛」だということになります。

だから問題はどのあたりが「適切」な自粛レベルであり、そして現状の自粛のレベルが「過剰」なのか「過小」なのかという判断だということになるのですが―――今の日本には、「過剰」な自粛が横行してしまい、それによって日本の社会と経済が深く傷付いてしまったと考えざるを得ない状況にあります。

本年令和2年の4月、5月のコロナ感染症の拡大と収束のデータを見る限り、4月7日に始められた「8割自粛」要請は、その収束に必要であったとは到底言えないものであったことが今、明らかになっています。なぜなら、その要請は感染ピークの一週間以上「後」に発出されたものだったからです。
https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/540836/3/

また、各国のデータを眺めてみても、自粛を激しくした国の感染被害が少なく、自粛をしなかった国の感染被害が大きいのかというと、必ずしもそうではなく、自粛の効果は明確ではありません。つまり、理論的に考えれば「自粛」の感染抑止効果が無い筈は無いのですが、それでもなお、自粛「以外」の要因の効果の方が大きく、自粛すればそれで感染は抑えられる、という訳では決して無いようなのです。
https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1299640271508877312

ただし、「自粛」すればするほど、経済が冷え込むことは確実です。

実際、経済の冷え込みデータと自粛の程度のデータとの間には明確な関係があります。具体的に言いますと、国民の移動量を1割削減すると、実質GDPは年率で約7%程度は下落してしまうという結果が、当方の手元の統計データから示されています(例えば日本は4割国民移動量を自粛したので、ちょうど約28%、年率で実質GDPが下落しています)。

つまり、「自粛」というものは、その感染症抑制効果はマクロデータでは明確ではないのですが、経済に対しては確実かつ強力に破壊する力を持っているのです。

こうした諸点を考えれば、日本の自粛が、少々「やり過ぎ」だった疑念が明確に浮かび上がるのです。少なくともあの「8割自粛」も、今から思えば、感染収束のために必要なものではなかったと考えざるを得ないのです。

それ以外にも「2メーターの社会的距離/ソーシャルディスタンス」を空けるべしと政府は指導しており、それによって、映画館や劇場は多くの客を入れることができず、経営継続が不可能な状況に追い込まれていますが、マスクをしたり黙ってさえいれば、社会的距離などなくても感染リスクはほぼゼロになります。したがって、この2メーターの社会的距離の規制もまた、(密接するという行為についての)「過剰自粛」と言わざるを得ないものなのです。

こうした「過剰自粛」が日本を横行するその根本的な原因は、「コロナは怖いもので、絶対に感染拡大させてはならないものだ」という認識、ならびに、「そう考えるべきだ」という「タテマエ」が社会的に共有されているからに他なりません。その結果、「自粛は善で、自粛しないのは悪」という「空気」が世間を覆い、人々はコロナが怖かろうが怖くなかろうが、兎に角「自粛」せざるを得ない状況に陥っているわけです。そしてその結果、「無駄な自粛」が横行し、傷付けなくても言い経済が激しく傷付く事になっている、という次第です。

つまりまさに今、日本は「自粛」のやり過ぎによって自滅しかかっているわけです。

ただし―――この過剰あるいは過激な自粛とそっくり同じ事態が、我が国で何十年と続き、それによって、我が国が自滅への道をまっしぐらに進んでいるという事態があります。

それは、「緊縮」です。

緊縮とは、政府の財政の態度の事を言う言葉ですが、一言で分かり易く言えば「ケチ」であることを言います。

つまり、医療や防災、国防、技術開発など、政府は色んなものにオカネを使っているのですが、「財政が厳しい、このままだと破綻する!」と言いながら、そういうオカネを増やさないでどんどん搾っていく、という態度が「緊縮」です。

さらには、「財源が足らない!」と言って、消費税をどんどん増税するのも、同じく「緊縮」的な態度です。

つまり、「民から税をむしり取るだけむしり取って、民のためにあまり使わないようにする」という態度が「緊縮」なわけです。

もちろん、緊縮が常にダメだというわけではありません。政府がカネを使いすぎればもちろん、オカネが市中に過剰に増えてしまい、好ましくないインフレになってしまいます。でもだかといって、民からカネを吸い上げるだけ吸い上げて、全然民に使わなければ、その国の経済は完全に疲弊し、国家が自滅に向かうこともまた明らかです。

事実、日本ではこの「緊縮」が、バブル崩壊で不況に陥った90年代以降、「暴走」しはじめたのです。そして日本経済は当然のように疲弊し続けていったのです。

消費税が5%に上げられ、8%に上げられ、10%に上げられましたが、そのたびに日本経済は激しく冷え込み、成長する力をどんどん失っていきました。その一方で、政府の支出もどんどん削られ、必要な政府対策がほとんど進まない状況になってきています。その結果、日本の疲弊、つまり「自滅」は加速し続けているのです。

じゃあ、なぜ、そんな緊縮が続けられてきたのかというと―――「このままだと日本は借金が膨らんで破綻する~!」という恐怖心が拡大し、「緊縮が善、緊縮しないのが悪」と考えるべきだという「空気」が我が国を覆ってしまっているからです。つまり、「コロナについて自粛すべき!」という空気が蔓延しているのと、そっくりの状況がこの「緊縮」においても存在し続けているわけです。

すなわち、どちらも、次のような全く同じプロセスを経て「暴走」を始め、日本を自滅に導いているのです。

1)コロナなり財政破綻なりが「怖い」という事が共有で認識され、

2)その怖い事態を避けるために、自粛なり緊縮が必要だ、だから、自粛/緊縮が「善」であり、自粛なり緊縮なんて要らないという人間は不道徳だ、という「空気」が濃密になり、

3)ますます人々は、自粛/緊縮をせざるを得なくなっていく―――

4)その結果、自粛/緊縮が「暴走」をはじめ、その水準が適切なレベルを遙かに超えて「過剰」なものとなり、

5)その必然的な帰結として、日本全体が自滅に向かっていくことになる。

自粛と緊縮が同じプロセスにはまり込んでしまうのは、それはもちろん、自粛も緊縮も、対象が「日常活動」なのか「政府支出」なのかはさておき、感染爆発や経済破綻等の「恐ろしい事態」を避けるために、その行動を「抑止」させようとする、という構図を完全に共有しているからです。

いずれにせよ、このプロセスにはまり込んでしまった人々を救い出すのは至難の業です。

なんと言っても、彼等は、感染爆発や破綻に対して恐怖を抱き、自粛や緊縮が絶対必要だと思い込んでおり、その弊害など目に入らなくなってしまっているのです。そして、彼等に反対する人々を兎に角「不道徳だ!」とレッテル張りし、完全に無視したり、あるいは逆に執拗に攻撃し続けてしまう心理状況に陥ってしまうのです。

でもだからといって、この自粛や緊縮の暴走を放置しておいて良いわけはありません。これを放置すれば、日本が自滅することは確実だからです。だから、「自粛」や「緊縮」の水準を、(過小にならないように注意しながら)適切なレベルに社会的に「押し戻して」いくことが必要なのです。

それこそが「政治」と呼ばれるものに今、最も強く求められていることなのです。

折りしも今、超長期政権を築き上げた安倍総理が辞任することが決められ、新しい総理総裁が誕生することとなりました。

本書執筆時点では未だ、それが誰になるのかは分からないのですが、今のところ、石破氏、菅氏、岸田氏が有力候補ではないかと言われています。

当方が意中で誰を応援するのかの話は一端さておき、それがどなたになるにせよ日本の未来を託す新しい総理が「自粛/緊縮の社会的政治的暴走」に果敢に挑み、その水準を適正化するための政治を全面的に展開されんことを心から祈念したいと思います。

そして、本記事読者の皆様には是非とも、それぞれのお立場で、そういうそうした政治の流れを促す世論形成にご協力頂きたいと強く祈念しております。

何卒、よろしくお願い申し上げます。

(追申:本記事は、新総理誕生にあたり、各総理候補にご理解頂きたい内容を改めてまとめたものですので、各総理候補、そしてより多くの国民の皆様方にお読み頂くことを企図し、無料公開させていただきます。なお、本記事は最初に発信した記事の誤字等修正し、再配信いたしたものです)

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