4月26日、習近平とゼレンスキーの電話首脳会談があった。この会談について、日本の専門家とマスコミは口を揃えて意義を過小評価するコメントを並べている。山添博史は「中国がウクライナの呼びかけにしぶしぶ応じた」と言い、東野篤子は「(中国が何を考えているのかウクライナ側が)見極め(ただけ)」だと述べた。27日の報道1930の堤伸輔も右に同じ。が、これらのコメントは会談の真実を捻じ曲げたプロパガンダの言説であり、正確な解説とは言えない。今回の会談はゼレンスキーの側から申し込んでいる。ここに注目する必要がある。ウクライナの方から中国に会談を持ちかけて実現したものだ。ウクライナが会談を要請し、中国が応じて開催に至った。だから、会談後のゼレンスキーの発言も中国の役割に対して期待感を表明する積極的な内容になっている。 「中国は国際舞台で巨大な影響力を発揮している」「中国が平和の回復のために外交的な手段を通じて危機の解決に重要な役割を発揮することを歓迎する」と言っている。中国の場合、日本と同じで「出たとこ勝負」のアドリブの首脳外交はやらない。必ず事前に「結果」を詰めた上で行う。つまり、会談後に発表するステイトメントを入念に調整し、合意内容を固めた上で会談本番に臨む。これらのゼレンスキーの発言内容は、事前に中ウ間で詰められたもので、ウクライナが発表を合意したものだ。こうしたゼレンスキーの言葉が並ぶ「結果」でなければ、すなわち中国にとって「成功」の会談でなければ、中国は首脳会談に応じなかっただろう。したがって、事実は山添博史が言う「中国がしぶしぶ応じた」ものではなく、双方の WinWin が果たされた外交だった。 東野篤子の言うように、ウクライナは中国の調停の中身を探っただけという見方も当を得てない。中国側にはそれほど新規で具体的な停戦案はなく、その準備もなかった。抽象的な和平案である点は前回の3月の訪露のときと同じだ。ステイタスは変わっていない。今回の電話会談はウクライナの方が頼み込んだものであり、中国側からの呼びかけではない。中身は変わってないのに、今回はウクライナの方から会談を求めている。前回は、会談を呼びかけたのは中国の方だった。ウクライナの方が態度が変わったのであり、この点を看過すべきではない。前回、中国側が会談を持ちかけたとき、ゼレンスキーは、中国がロシアの侵略戦争を非難することが先決だとか、まず完全撤退せよと言えとか、会談したいのなら習近平がキエフに来いと高飛車に出て、事実上、持ちかけられた首脳会談を蹴っていた。アメリカからの指示に従ったのだろう。 ゼレンスキーとウクライナ政府そのものは、内心では中国に期待する意向を持っていて、2月3月のときもその気配が見え隠れしていた。客観的に見て、戦争するロシアとウクライナの間に入って調停役ができるのは、その実力と立場を持っている国は中国しかない。ウクライナにとっても中国は頼りになる国であり、ロシアに影響力を持つ中国を頼りにせざるを得ない現実がある。実際にロシアと停戦協議を始めて、合意を実効あらしめるものにするには、中国を仲介者にするのが最も合理的で妥当な選択だ。3月時点でゼレンスキーは習近平を袖にしたが、おそらく事情と状況が変わり、中国の役割を積極的に認める方針になったのだろう。前回は、ゼレンスキーもアメリカも中国の仲裁にネガティブな反応を返していたが、今回はカービーが首脳会談を歓迎するコメントを発している。アメリカの態度も変わった。… … …(記事全文2,640文字)