鈴木元の『志位和夫委員長への手紙』を入手して読んだ。その感想と私なりの日本共産党新生の提言を書く。一読して、まず誤字脱字が多い。とんでもない間違い(事実誤認)の記述もある。校正と編集が杜撰だ。第七章の文中、丸山真男が帝大卒なのに二等兵で召集された理由について、「丸山は政府に批判的な論文を執筆したこともあって」と書いていて(P.187)、これには唖然とした。こんな事実はない。どこからこんな作り話を持ってきたのか。丸山真男が二等兵で召集された理由は、一高時代に治安維持法違反で逮捕された前歴があり、憲兵の監視下に置かれていた元思想犯(ブラックリストの身)だったからである。「政府に批判的な論文を執筆」などと、そんな事実はないしあり得ない。当時の論文は徂徠学二論文を含めて全て思想史研究で、現実政治を論じた作品などない。(写真は産経新聞) こんなことは常識だ。政治や政治思想に関わる者なら誰でも知っている初歩的事実だ。あまりに非常識な虚偽を平然と書いていて驚いた。本の編集者は松竹伸幸である。松竹伸幸が出版を急いだあまり、チェックが不十分だったと言えばそれまでだが、こんな重大な誤記に二人が気づかなかった点は異常で、読者として二人の知性を怪しむに十分な過失と言える。他にも幾つかあるが、誤記よりももっと重大な問題があるのでそちらを指摘したい。決定的な衝撃を受けたのは、やはり安保政策に関する部分だ。こう書いている。 ■ 鈴木元の暴論 - まるで右翼の認識と主張、なぜ半世紀の党生活者が ------------------------------------------------- ここで大切なことは、政権につくということは日本の領土・主権と国民の命を守ることが第一義的任務であるということです。その場合、戦後長く言われてきたアメリカが行う戦争に日本が巻き込まれる危険より、今や中国が台湾(沖縄)を攻める危険の方がずっと現実的な危険となっていることです。(略)中国の侵略的軍事行動にたいして、警察・海上保安庁だけで止めることは不可能です。そして(略)現実を考えれば、日米安保条約に基づく米軍の出動ぬきに中国軍の行動に対応できないでしょう。(第二章 P.49-50)… … …(記事全文5,289文字)