自衛隊のJADGEシステムは機能しておらず、北朝鮮のミサイルから日本を守るミサイル防衛の運用から外されているのではないか。11月4日に起きたJアラートの誤報問題の原因について、当初からその疑念が拭えず、ツイッターで発信してきたが、日を追うほどにその直観と仮説の信憑性を補強するようなマスコミ報道が続き、今では半ば確信に変わっている。最初に結論を提起すれば、自衛隊・防衛省は、北朝鮮が発射したミサイルを探知・捕捉・追尾するレーダーシステムとして、自前で築いたJADGE(早期警戒管制システム)を使っていない。米軍経ヶ岬通信所のXバンドTRY-2が使われている。 今回の誤報はJアラートに起因するのではなく、そこに載せる元々の情報が間違っていたことが真の原因だ。レーダーがミサイルの探知と捕捉と識別に失敗し、軌道計算を間違えて官邸に伝えている。米軍経ヶ岬通信所のシステムのミス(不具合)だと考えられる。バグなのか、人為的ミスなのか、性能不備なのかは不明だが。ここ数年、何となく、北朝鮮のミサイルについての初期情報と初動対応が以前よりルーズになり、アバウトになり、性格が政治化している状況変化を私は感じていて、技術的な精度と緊張感がなくなっている印象を強めていた。なぜだろうと不思議に思っていた。韓国軍の発表の方が常に正確で、情報の信頼性が高い。防衛省の発表は遅くて杜撰なのだ。 (1) 小原凡司の「説明」 今回の誤報・誤認識について、マスコミで誰がどのように説明し、言い訳していたかを整理しよう。まず、笹川平和財団の小原凡司が3日のNHK-NW9に出演してこう言っている。曰く、火星17型の一段目ロケットにトラブルが起きて落下したが、落下しつつ慣性飛行する物体の放物線軌道をレーダーが探知し、中距離ミサイルとして識別してJアラートに送ったのだと。この説明は、何を言っているのかよく分からない。意味不明だ。発射されたミサイルがロフテッド軌道のICBMであったなら、レーダーシステムは捕捉の瞬間にそう判別してフラグを立てるはずだ。北朝鮮のミサイルに対応するのだから、①ICBMか、②中距離ミサイルか、③短距離ミサイルか、三つを属性識別するテーブルが用意されているはずである。 今回、韓国軍は正しく全容を把握し、火星17型が不具合のため日本海に落下したと早い段階から説明していた。ロフテッド軌道の急角度で天空に発射したICBMが、日本列島を超えて太平洋まで届く道理がない。政府は、初報の時点で、日本から1100キロ離れた太平洋上に落ちたと説明していた。これは、今回のミサイルが10月4日に発射されたものと同じく、中距離ミサイルだと判断されていた(誤認されていた)ことを意味する。小原凡司が言うように、トラブルによる失速と放物線軌道のイレギュラーな変化を、間違えて中距離ミサイルの弾道だと認知し識別して情報送信したのであれば、レーダーシステムのお粗末としか言いようがない。探知に失敗している。小原凡司の話は放物線軌道の物理の常識を逸脱している。… … …(記事全文5,004文字)