Foomii(フーミー)

世に倦む日日

田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)

田中宏和

ヨーロッパでは市民がNATOに反対して大規模デモをしている

■先週(10/16-21)半ば以降、プーチンは核を撃つのではないかという「プーチン核使用脅威説」がマスコミで論議されなくなった。テレビの報道番組のネタにならなくなった。今月はずっとその話ばかりが続き、夜の放送を埋めていた。21日に米ロ国防相会談があり、ここでNATO側の核報復を含む反撃作戦の意思が通告され、ロシア側にメッセージとして公式に伝えられ認識共有されため、とりあえず危機を煽る西側の宣伝工作はトーンダウンにしたのだろうか。米ロ国防相会談は、明らかに、13日のニューズウィーク誌に載ったウィリアム・アーキンの判断と提言がそのまま米軍政府によって政策実行に移されたものだ。 しかし、よく思い出せば、「プーチン核使用脅威論」の派手なマスコミキャンペーンというのは、過去にもあり、ロシア軍が4月に北部から撤退したときも、「追い詰められたプーチンが核を使う」という言説が夥しく流された。定番オールスターズの面々が松原耕二や反町理と一緒に毎晩大声で連呼していた。二度目はマリウポリ攻防戦のときで、例によってオールスターズが、今度は「プーチンが化学兵器を使う」というキャンペーンを展開した。高橋杉雄や兵頭慎治や山添博史や小泉悠が、今と同じように代わる代わるテレビ出演して「プーチン化学兵器使用論」の蓋然性を言い、明日にでも起こるという恐怖を視聴者に撒いて扇動していた。結局、化学兵器は使われなかった。 ■今回は三回目のキャンペーンだ。要するにプーチン悪魔視を念押しする刷り込みであり、西側陣営の日本の世論工作のプロパガンダ作戦である。高橋杉雄の口調が典型的だが、公共の電波を使った「解説」は軍事作戦の一環であり、公共空間を戦場とした軍人の行動であり、いわゆる情報戦の一部に他ならない。時間が経てば、日本の市民も遠い欧州の戦争の話に飽き、いわゆる「ウクライナ戦争疲れ」を起こすため、それはならじと情報戦の作戦活動をテレビに入れ、刷り込みのメンテナンスをしている。日本の国民世論をプーチン憎悪で固め、NATOの戦争を神聖化させ、日本国民を嘗ての国防婦人会のような「銃後の隊列」として引き締めること。それがオールスターズの任務である。 ロシアが核を使用する場合は「国家存亡の危機のときのみ」とラブロフは言っている。同じ説明は4月にもしていた。国家存亡の危機のときとは、NATOがロシア領への侵攻を始め、ロシア連邦が崩壊の危機に瀕した最終局面を意味するだろう。国家崩壊の屈服か、核反撃の活路か、この事態に遭遇したときは、プーチンの決断以前にロシア国民多数が核使用の必要を認め、軍政府に要請する空気になると想像される。私見では、カリーニングラードがNATOに攻略占領される段階がロシア国民のレッドラインと考えられ、現在の焦点のクリミア半島がウクライナ軍に奪取されてもその臨界線には達しないだろう。核を北朝鮮のようにブラフとして使い、アメリカを牽制することはあるだろうが。
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