■NHKのニュースで「統一教会」の語が出てこない。7時のニュースも、NW9も、「宗教団体」と言うだけで「統一教会」とは絶対に言わない。伏せ続けている。世間一般は、その宗教団体が統一教会であることは百も承知なのだが、NHKは頑として統一教会の名称を原稿に入れず、放送で固有名詞を流そうとしない。衝撃の事件から2週間が過ぎ、そろそろNHKも「統一教会」の発語を解禁するかと思っていたが、ずっと隠し続けている。受信料を払っている視聴者に対して、奇妙で頑なな意思を示している。このことがまさに事件だ。 民放のTBSも面妖な不作為の報道を続けていて、松原耕二の報道1930が2週間経っても事件を取り上げようとしない。見ざる聞かざるの態度を貫徹している。事件が起きたのは今月8日。その後の番組の軌跡をたどると、11日に参院選特集、12日にウクライナ情勢、13日もウクライナ情勢、14日に中東情勢、15日に石油と中東問題、19日に日銀金融問題、20日にロシア情勢、となっている。途中、途切れている日は世界陸上を流した日だ。事件から2週間、ぶっ通しで事件を避け続け、意地でも触れないぞという姿勢を崩さない。 ■なぜ、NHKとTBSはこうした態度をとるのだろう。偶然ではあるまい。NHKもTBSも、明らかにこの隠蔽と不作為を意図的にやっている。統一教会をタブーにし、事件の真実を国民に伝えないように努めている。まるで中国やソ連と同じだ。NHKは視聴者にメッセージを発信していて、統一教会について関心を持たないように、事件の核心が統一教会と安倍晋三との関係であることを認識しないように、事件については「民主主義への脅威」としてだけ捉え、その他のことは考えないように誘導し、それ以外の世論を発生・喚起させないように情報統制している。 TBSの報道1930も同じだ。視聴者はこの暗殺事件について知りたく、動機や背景や影響を知って考えたく、その材料提供をマスコミに欲しているのに、公共の報道機関たるTBSがそれをせず、拒否し、故意に別のネタで延々と時間を潰し、視聴者から事件を隠す役割を果たしている。TBSの社の憲法である「TBS放送基準」を確認すると、第4項に「常に世論と視聴者の要望を把握し、これを放送番組に反映させる」とある。果たして、「視聴者の要望を把握し」た結果が、2週間にわたって事件を無視し続け、報道から排除し、ウクライナ情勢や中東情勢の特集で埋め続けることなのか。… … …(記事全文4,284文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)