■先週、NW9の田中正良や報ステの大越健介は、暗殺事件のニュースのたびに「犯行の動機の解明が待たれます」と言った。決まり文句のように、「なぜ犯人が安倍さんを狙ったのか分かりません」と繰り返していた。山上徹也の動機は誰の目にも明快で、安倍晋三が統一教会の広告塔だから狙ったことは明白だ。動機に不審な点は何もない。だが、その核心から話を逸らし、無視し、強引に捻じ曲げ、統一教会と安倍晋三とは無関係だと言い張り、犯人の思い込みだとか思い違いだと言い、安倍晋三の側に撃たれる理由はないとマスコミは強調した。 「犯行の動機の解明が待たれます」という田中正良や大越健介の言葉は何を意味しているのだろう。そう不審に思っていたが、おそらくそれは、警察に対する教唆と圧力だったのだろう。つまり、早く山上徹也の背景を調べて、安保法制の反対デモに出ていたとか、安倍批判の投稿をネットに発信していたとか、そうした反安倍の過去の証拠材料を見つけろという意味のシグナルだったのに違いない。もうすぐ警察がそれを探して提示するから、皆さんもう少しお待ち下さいと国民にメッセージしていたのだ。それがNHKやテレ朝の期待する「真の動機」だったのだ。 ■7月13日に東スポが不審な記事を出し、「山上容疑者の背後に2つの〝反アベ団体〟か 捜査当局が重大関心」と報じた。全くのガセネタで、何の根拠もないデマの散布だが、これを東スポに書かせた人間がいる。警察に対する介入の政治であり、早くこの線で「背景」を捏造しろという手回しの合図だったと看取できる。併せて、同13日に片山さつきが「警察庁長官に『奈良県警の情報の出し方等万般、警察庁本庁でしっかりチェックを』と慎重に要請致しました」「国益を損なう事はあってはなりません」とツイートしたのも、同様の趣旨と考えられ、ストレートな警察への圧力行使だった。 だが、事態はそれとは逆方向に動き、田中正良や大越健介や片山さつきの思惑や工作とは裏腹に、真実がどんどん明らかになって行く。先週後半、まず週刊文春が山上徹也と一家の凄絶な過去を報じ、弁護士の伯父がマスコミ取材に応じて証言、兄と妹に死亡保険金を渡すための海自時代の自殺未遂とか、小児がんを患っていたその兄が2015年に自殺して果て、本人が葬儀場で慟哭する姿があったとの情報が出て、世論は一気に同情論が高まる進行となった。続いて週末、岡山から松江のブロガーに送った「決意の手紙」が紹介され、本人のツイッターが公開され、人物像や背景はくっきりした輪郭となる。… … …(記事全文4,588文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)