■先週、岸田文雄がG7とNATOの首脳会議に出席。出発前の会見で、「日本の総理大臣として、初めてNATO首脳会合に出席いたします。この機会を捉えてNATOとの連携を新たなステージに引き上げたいと思っています」と決意表明した。この問題について、国内では批判はおろか議論もほとんどない。国内マスコミは、この政府の新方針に対して賛成し支持する基調の報道ばかりで埋められていて、憲法上の問題を指摘する声もなければ、軍事的な危険と脅威を言う声もない。その現実が私にはどうにも理解できず、途方に暮れる。 NATOは集団的自衛権の軍事同盟である。その敵はロシアであり、今回明確に「最大かつ直接の脅威」と定義した。NATOの仲間に加わることは、NATOの新方針を日本も共有するということであり、ロシアを敵認定して軍事的に対峙するという意味である。欧州においてNATOとロシアの間で戦端が開かれれば、自衛隊もNATO陣営の一員として参戦し、極東ロシア軍に攻撃を加えるという意味だ。今回のNATO首脳会議の決定と空気からすれば、またリトアニア情勢の緊迫からすれば、いつNATO軍とロシア軍との間で戦闘が始まってもおかしくない。 ■NATOがロシアと戦争を始めれば、当然、NATO司令部(米軍)は自衛隊に極東地域での作戦行動を指示し、ロシアを東から挟撃する役割を自衛隊に受け持たせるだろう。欧州で戦争が始まったとき、NATOパートナーの日本が何もせずに局外中立で傍観できるわけがない。軍事行動を要請され、極東ロシア軍との間で血を流さないといけない。NATO司令部は自衛隊の戦力と行動に大いに期待するだろうし、極東ロシア軍の地上部隊や艦隊を欧州方面に周回させぬよう釘付けし、できれば無力化する作戦を求め、自衛隊はその任務を請け負わされるだろう。 北方四島への上陸と占領、宗谷海峡の封鎖とサハリン露軍基地への攻撃、オホーツク海の制海権と制空権の奪取、日本海上の航空優勢確保とウラジオストクの海上封鎖、ペトロパブロフスク軍港の攻略と千島列島全域の制圧、等々が自衛隊の作戦目標として割り当てられ、陸海空の部隊が動員され、激しい戦闘が行われる展開が予想される。そのような動き(=極東ロシアへの軍事侵略)に出たときは、当然、ロシア側から容赦ない反撃が放たれ、これら作戦活動を阻止するべく、中距離・短距離ミサイルの雨霰の応戦があるだろう。戦術核が使用されるかもしれない。… … …(記事全文4,135文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)