■7月4日放送の報道1930(TBS)で金融経済の問題がテーマとなり、日本の金利引き上げというクリティカルなイシューが焦点となって議論がされた。今のわれわれにとって最も重要な問題であり、世界中が強い関心を持って注目している問題である。この番組を褒める機会は滅多にないが、久しぶりに中身のある報道内容だったと評価してよい。全体の構成と進行もよく、準備した資料もポイントを押さえていた。が、何より番組を成功させたキーの要素は、出演した藤巻健史のショッキングな解説と警醒の弁だっただろう。 録画が上がっているので、見逃した方はぜひご覧いただきたい。解説者は3人で、あとの早川英男と加谷珪一は口を濁す発言しかしなかったが、藤巻健史はストレートに本質を射抜く見解を発した。①日本も金利引き上げに必ず追い込まれること、②日銀保有の国債と株式の価格が下がって市場から債務超過と看做されること、③円の信認が失われて外国資本が日本市場から離れること、④日本の中央銀行である日銀が破綻すること、⑤アベノミクスは財政破綻の先送りだったこと。私もこの認識に基本的に同意だ。 ■6月22日の記事「預金封鎖の不安」の中で、藤巻健史とほぼ同じ予測を書いた。ドラスティックでカタストロフィックな見通しだが、社会科学的に考えて、この分析と結論にしかなりようがなく、他の楽観的な方向性やマイルドな着地は全く思い浮かばない。①の日本も金利引き上げに追い込まれるという観測は、おそらく大方の者が賛同するはずだ。②の日銀の債務超過問題については意見が分かれ、MMT派は、バランスシートの計上値は簿価であり時価ではないからという会計論を根拠にして、日銀が債務超過に陥る心配はないという反論を立てている。 その論理の延長から、日本のMMT派は、④の日銀の破綻もないし政府の財政出動の継続も問題ないと主張する。このところ、おそらくれいわ新選組支持の左翼と思われるが、私のツイッターに侮辱と罵倒の落書きをする者が現れるようになっていて、日銀は不滅で国債発行は永続可能だという信念を書き込んでいる。ケルトンが来日時に述べていた「インフレが起きない範囲ならOK」という前提条件を忘れたのだろうか。今は40年来の悪性インフレの時期で、ケルトンの理論が成立する前提が失われている。私は日本共産党よりもれいわの方に傾いた立場だが、MMT理論は今の局面では通用しないと断言する。… … …(記事全文4,104文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)