■6/19、フランスの総選挙でマクロンの与党が大敗し、過半数を割る結果となった。大物の閣僚が次々と落選、左派連合と極右が議席を伸ばしている。原因はウクライナ戦争による物価高で、庶民の不満がストレートに票に現れたと説明されている。実は欧州もインフレなのだ。アメリカのインフレと利上げばかり注目されているが、ユーロ圏の5月のインフレ率は過去最高の8.1%に達していて、食料品とエネルギーの高騰が国民生活を直撃している。そろそろ黄色いベストの登場かなと予想していたら、その前に議会選挙で与党が惨敗した。 マスコミ報道の論調では、マクロンのロシアに対する日和見的な態度が批判されている。日本のマスコミは西側大本営のタカ派の代表格だから、目を怒らせて独仏伊の対ロ和平派を叩く報道と解説に終始している。ゼレンスキーおよび英米側と一体になっている。が、マクロンがプーチンに宥和的な発言をしていたのは、目前に選挙が控えていたからで、国内の世論を意識した政治だったのだ。フランス国民は、NATOが戦争を長引かせることに反対で、停戦を進めて穀物とエネルギーの問題を解決しろと要求しているのである。 ■その要求と論理は、基本的にイタリアやドイツも同じで、物価高問題を優先する意識が国民の中で高く、政府も国民と同様の姿勢にある。ネットで情報収集していたら、ドラギ政権に影響力のあるイタリアのエコノミストの主張が出ていて、ECBの利上げに反対を唱えていた。その論拠として、欧州と米国のインフレは要因が異なっており、欧州はもっぱらガス価格が元凶だと説明している。景気を冷やすから利上げはするなと、日本に似た立場の政策論を言い、ガス価格の問題を解決するのが第一だと訴えている。ドラギのウクライナ問題への対応が宥和的なのは、この認識があるからだろう。 ドイツ・フランス・イタリアの3か国の中でも、一瞥して最も妥協的に見えるのがイタリアで、穀物とエネルギーの問題に関心が高く、イデオロギー的な強硬論から遠いのがイタリアだ。食料危機が他と違ってイタリアにとっての死活問題だからではないか。その意味は、イタリアがアフリカから欧州に押し寄せる食料難民の玄関口に位置しているからで、イタリア半島南部に難民が集中して漂着するからである。北欧や東欧内陸は地中海から遠い。フランスもリスクが高く、西アフリカにフランス語圏の貧困な途上国が多くある。難民が地中海を渡り、言葉の通じるフランスに押し寄せる。… … …(記事全文4,086文字)