■ダウ平均が1年5か月ぶりに3万ドルを割った。FOMCでの0.75%の利上げ決定(6/16)に影響された市場の反応である。1994年以来27年ぶりの大幅利上げを受けて、市場の弱気がいちだんと加速する趨勢となった。NASDAQは4.08%も下落し、昨年秋の最高値から35%も価値を失った。7月にダウが3万ドル台に戻す状況は難しいだろう。トレンドを単純に延長して占えば、8月には2万ドル割れを迎えている。パウエルはFOMC後の会見で、7月も0.75%の利上げがあると予告しており、夏の市場は悲観論一色となるのは確実だ。 パウエルの発言を要約した記事によれば、FRBは2022-24年の各年末の政策金利を3.4%→3.8%→3.4%と想定している。つまり、今年よりも来年の政策金利が高くなっていて、インフレ収束が年内に終わらず、来年以降も課題と格闘が続くという厳しい見通しが立てられている。アメリカのインフレは厄介で、簡単に退治できるものではないのだ。6月のCPI(消費者物価指数)も未だ上昇中という計測があり、何人かの専門家の予測では、インフレ率はさらに悪化して9%に達するという見方も示されている。7月の利上げは0.75%では生ぬるいという声も出ている。 ■FRBが精力的に利上げを重ね、QT(Quantitative Tightening:量的縮小)を推進すれば、当然、市場は冷えて株価は下がる。金融引き締めはマーケットの動きを止める。マネーの増殖の活力を奪う。それは景気抑制の方向に作用する政策である。ここ数十年、こうした政策がアメリカや先進国で発動される場面はなく、景気を冷やす方向に当局が舵取りし注力する姿を見ることはなかった。量的緩和が常態であり、ゼロ金利が常識であり、先進国の成熟経済はデフレ体質が基調で、当局(政府・中央銀行)はデフレ対策が日常業務だと現代人は観念していた。 金融緩和と財政出動。アベノミクスの政策をトランプもバイデンも採用して模倣している。リーマンショック後の西側諸国の経済政策は、基本的にアベノミクスと同質同類で、当局(中央銀行と政府)がマネー(通貨と国債)を市場に撒きまくり、株価を押し上げ、成長とトリクルダウンを導くというものだった。安倍晋三、トランプ、バイデン、3人の経済政策に差はない。そして、それが当然で普通になっていたのが現代経済の構図だった。今、その情景が一変している。当局は必死で市場のマネーを圧縮する方策で臨み、過剰流動性を抑止する挙に出ている。本当に久しぶりの出来事で、懐かしさを感じる。… … …(記事全文4,180文字)