■EUが2019年に決議した歴史認識の転換の問題について、少し付言をしたい。5月17日放送の報道1930の中で森本敏が、ウクライナ戦争終結後の東欧情勢が不穏化するという予想を示していた。今、ウクライナにNATO諸国からこれでもかと最新鋭兵器が大量供給されていて、すべて無償であり、ウクライナは短期で軍事大国になりつつある。欧州で圧倒的な軍事力を持った国になっていて、戦争が終わった後、東欧の軍事バランスは一変、各国がウクライナを警戒する新たな緊張状態が生じるだろうと述べた。 現時点のマスコミ論者の観測では、この戦争でロシアは敗北し、侵攻後に占領した地域はすべて奪還されるという展望になっている。東部ドンバスでロシア軍が敗退した後、ヘルソン攻防戦が始まり、8月頃までに南部進駐のロシア軍が全滅一掃されるというのが多数の見方だ。18日の報道1930では、ゼレンスキーが、クリミアを交渉で取り戻すと語っていたと紹介された。テレビの報道番組に出演している解説者(西側大本営御用論者)の説明を聞くと、アメリカは、クリミア奪還を武力で決行する戦略に消極的な様子が窺える。 ■クリミアはロシアに編入されてすでに8年経ち、住民の構成がロシア語母語のロシア人だけになっている。そこにウクライナ軍(NATO)が突入すると、強烈な抵抗と反撃に遭い、半島全体でパルチザン化した住民のゲリラ戦が長期化し、ウクライナ軍が疲弊してしまうという判断があるようだ。森本敏も、小谷哲男も、年内のクリミア奪還作戦には反対の意見を並べた。小谷哲男のコメントは、アメリカ・CIAの意向のダイレクトな表明である。「交渉」でクリミアを取り戻すという意味は、8月後にはプーチンが失脚して、「交渉」に応じる相手がロシアに出現しているという意味だろう。 米英とウクライナは、今、非常に楽観的な戦局見通しに立っていて、プーチン失脚を確信し、それを前提した工程表で戦争に臨み、戦後の構想を練っている。ひとまず、彼らの見込みどおりに戦争が終わると仮定して、そこにEUの新歴史認識がどう絡むかを考察しよう。核戦争エスカレーションの破局に至らず、ロシアが何の手出しもできず、一方的に封じ込められ、アクーニンの予言するように完敗と国家分裂の事態になった場合の想定である。まず、そのときは、前の記事で書いたように、確実にベラルーシでカラー革命が起き、連動して西隣のカリーニングラードが焦点に浮上している。… … …(記事全文3,810文字)