3月3日に放送された報道1930の中で、「ウクライナの『非ナチ化』」の問題が取り上げられた。プーチンが今回の侵攻の目的として掲げている大義である。放送の中で松原耕二は、「われわれ西側からすれば、こういう物言いというのは、いつの時代のことで、どういう考えの持ち主なんだろうと思ってしまいます」と言い、時代錯誤で不当なイデオロギーだと切り捨てた。松原耕二だけでなく日本のマスコミの論調はすべて同じで、NHK-NW9の田中正良と和久田麻由子も「プーチンの偏った歴史観」と決めつけている。 果たして、ロシア側が槍玉に上げている「ウクライナのネオナチ」は、松原耕二や田中正良が言うように根拠のない、無意味で問題にならないものなのだろうか。まともに取り合う必要のないロシア側の誤った認識と主張で、言いがかりのプロパガンダなのだろうか。日本では、ウクライナのネオナチの問題は、不毛で無視すべきロシア側のナラティブだと処理されていて、客観的な認識の対象になっていない。報道からオミットされ、取材も検証もされておらず、視聴者に欠片ほどの事実も紹介されていない。 ウクライナにネオナチの政治勢力が存在すること、それが2014年のマイダン革命のクーデターで重要な役割を演じたこと、アゾフ大隊という軍事組織を編成して東部2州で親ロ派を駆逐する主力になっていたこと、等々は、現在の日本のマスコミ界では禁句になっている。闇で覆われ、光が当てられず、都市伝説化されている。ネットでその事実を指摘する者には異端のレッテルが貼られ、陰謀論者呼ばわりされ、誹謗中傷と排除の対象になる。だが、実際にはウクライナにはネオナチの跳梁跋扈と大量虐殺があり、テロの深刻な悲劇があった。 2014年5月にオデッサで起きた虐殺事件について、マスコミは一切触れることなく沈黙している。日本語 Wiki にも情報がない。最近、ウクライナに都合が悪い情報は、検索で表示されないように細工されていて、Twitter や Facebook ではリンクが不可になるよう処置されているらしい。48人(57人)の親ロシア派住民がウクライナのネオナチによって殺された事件は、プーチンが侵攻の大義として掲げる「ネオナチ排除」を説明し理解する上では、きわめて重要な事実であり、したがってその主張の合理的な根拠となる材料の一つだろう。… … …(記事全文3,299文字)
世に倦む日日
田中宏和(ブログ「世に倦む日日」執筆者)