━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「植草一秀の『知られざる真実』」 2012/08/15 敗戦から67年未だ独立できない日本 第317号 ──────────────────────────────────── 敗戦から67年の時間が経過した。 改めて心に刻むべき言葉がある。 長崎大学医学部教授であった永井隆氏が死を前にして幼い二人のわが子に遺し た言葉だ。 永井氏は原爆で妻を失い、自らも原爆に被爆していながら余生を被爆者の治療 に捧げた人物である。 永井氏の言葉はいまも力を失っていない。 可燃性の高いナショナリズムを煽る風潮が強い現下の状況のなかで、私たち日 本人がもう一度かみしめるべき言葉が刻まれている。 「いとし子よ。 あの日、イクリの実を皿に盛って、母の姿を待ちわびていた誠一よ、カヤノよ。 お母さんはロザリオの鎖ひとつをこの世に留めて、ついにこの世から姿を消し てしまった。そなたたちの寄りすがりたい母を奪い去ったものは何であるか? ――原子爆弾。 ・・・いいえ。 それは原子の塊である。 そなたの母を殺すために原子が浦上へやって来たわけではない。 そなたたちの母を、あの優しかった母を殺したのは、戦争である。」 「戦争が長びくうちには、はじめ戦争をやり出したときの名分なんかどこかに 消えてしまい、戦争がすんだころには、勝ったほうも負けたほうも、なんの目 的でこんな大騒ぎをしたのかわからぬことさえある。そうして、生き残った人 びとはむごたらしい戦場の跡を眺め、口をそろえて、――戦争はもうこりごり だ。これっきり戦争を永久にやめることにしよう! そう叫んでおきながら、何年かたつうちに、いつしか心が変わり、なんとなく もやもやと戦争がしたくなってくるのである。どうして人間は、こうも愚かな ものであろうか?」 「私たち日本国民は憲法において戦争をしないことに決めた。… わが子よ! 憲法で決めるだけなら、どんなことでも決められる。憲法はその条文どおり実 行しなければならぬから、日本人としてなかなか難しいところがあるのだ。ど… … …(記事全文4,644文字)
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
植草一秀(政治経済学者)