□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2016年8月17日第630号 ■ ============================================================ 皇室典範は国民の手で改正しなければいけない ============================================================ 国民の圧倒的多数(8割-9割)が天皇陛下の生前退位を支持する事が分かった以上、もはや安倍政権はそれを認めるざるを得ない。 本来ならば皇室典範の改正が本筋であるが、メディアがはやばやと報じたように、安倍政権は特別立法で乗り切るつもりだ。 なぜか。 それは、議論が百家争鳴してまとまらないからだ。 なによりも安倍首相の支持基盤である国粋・保守が反対するからだ。 なぜ国粋・保守が反対するのか。 それは皇室典範を変えることは天皇制の本質の変更につながるからだ。 それでは天皇制の本質とは何か。 そして、それは憲法が定める基本的人権、主権在民とどう両立するのか。 じつは、この問題こそ、今度の天皇陛下の生前退位問題が我々に提起してくれた一大問題なのである。 そのことを、ノンフィクション作家・評論家の保阪正康氏が、発売中のサンデー毎日(8月28日号)で見事に言い当てくれた。 すなわち、彼は「平成の玉音放送を読み解く」と題する特別寄稿の中で、皇室典範に関して次のように書いている。 「・・・大日本帝国憲法成立と旧皇室典範はほぼ同時期に成立していて、いわば近代日本の天皇制はこの二つの枠組みで決まっていた。天皇はこの国の主権者であり、統治権、統帥権の総攬者であった。これに反して新憲法の成立とやはりほぼ同時期に決まった新しい皇室典範は、本来なら新憲法と併せて象徴天皇の両輪になるはずであった。ところが、たとえば新憲法では、国民の市民的権利を認める民主主義の創設を謳っているにもかかわらず、新しい皇室典範は旧皇室典範を踏襲した形になっていた・・・つまり今の憲法と皇室典範には、共通の回路があるわけではない。二つの枠組みには異質なものが抱え込まれている・・・」 私は知らなかった。 新皇室典範が旧皇室典範を踏襲していたとか。 そしてその事を知っていた国民はまずいないだろう。 賢明な読者なら、この事がいかに深刻な意味を持っているか、お分かりだろう。 つまり新憲法は天皇制に関して明治憲法の考え方を引き継いでいるということだ。 そして天皇制に関して明治憲法の考えを引き継いでいるということは、新憲法下のいまの日本は、完全な民主主義の国家ではないということだ。 新憲法の成立過程は国民の手に及ばないところで作られた。 しかし皇室典範はもっと国民の手の届かないところで作られ、その存在は国民の意識の外にあり続けたのだ。 天皇陛下の生前退位によって皇室典範の改正が不可避になった以上、我々は、特別立法というごまかしではなく、いまこそ皇室典範の改正を求めなければいけない。 すなわち国民の手で、皇室典範を、新憲法の定める民主主義、基本的人権尊重の精神にしたがって、作り直す必要があるのだ。 それはとりもなおさず新憲法を国民で作り直すということだ。 明治時代への回帰を求める国粋・右翼の連中が、おそれおおくも天皇陛下の生前退位のお言葉に不快感を抱き、皇室典範の改正に反対する理由が、これではっきりした。 日本が本当の意味で民主主義国家になれるかどうか。 いま我々は歴史の大きな転換期に立たされているのである(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)