□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2016年2月25日172号 ■ ============================================================== アベノミクスの矛盾を象徴するメガバンクの賃上げ見送り ============================================================== かつて私が外務官僚の駆け出しの頃、局長について国会に行くのが仕事だった。 大臣が答弁する代わりに政府委員である局長が答弁する。 その局長の答弁を補佐するために担当官が同行するのだ。 何を聞かれても答えられるように資料をたくさん持って行く。 当時は風呂敷にそれを包んで行くのが慣例であった。 それは、風呂敷が一番便利であるという生活の知恵であったが、もはやひとつのファッションのごとく、大きな風呂敷をもって歩くのが下っ端官僚の仕事ぶりを誇示するようなところがあった。 いまから思うと馬鹿馬鹿しい限りだが、当時はそれでも国会質問となると必死だった。 その時に、皮肉交じりにからかわれたのが、「あっちを抑えるとこっちが飛び出す」というのがあった。 つまり、資料がたくさんあり過ぎて風呂敷におさまらない。そこで無理をして一か所を押すと、他の場所から資料が飛び出す、風呂敷を結び終えるのに苦労をする、という様を言い当てた言葉だ。 いま私はメガバンクの賃上げ見送りの記事を読んでその事を思い出している。 アベノミクスの成功の為に、ついにマイナス金利に踏み切った。 当然ながら銀行の収益が悪化し、株価は軒並み下落した。 それだけではない。 収益の悪化は賃金上昇を困難にし、ついに春闘ではベアが出来なくなる。 それを見越して労組も賃上げ要求を自制する。 消費が冷え込むのは当然だ。 アベノミクスの成功の為に、無理をして一つの事を押し通せば、必ずどこかが飛び出す。 いつまでたっても収まらないのだ。 まさしくアベノミクスの自己撞着を象徴している姿だ。 あふれる資料を一つの風呂敷に収める事は、最後は風呂敷の端を無理に引っ張ってなんとかなっても、アベノミクスを成功させることは、そのようなわけにはいかない。 安倍首相はいつアベノミクスの破綻を認める事になるのだろうか(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)