□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2015年11月6日第905号 ■ ============================================================ 慰安婦問題の真の解決の難しさはここにある ============================================================= きのう、私が参加している「村山首相談話を継承し発展させる会」が出版した「検証安倍談話 戦後70年村山談話の歴史的意義」(明石書店)の記念シンポジウムが憲政記念館でひらかれ、パネリストの一人として参加した。 主催者側の受け止め方はどうかわからないが、私は率直に言って、その出席者の低調ぶりに失望した。 年配者ばかりであり、いわゆる左翼的なひとたちばかりという印象をぬぐい切れなかったからだ。 歴史認識問題といい、憲法9条といい、本当に国民は危機感を抱いているのだろうか、一般国民の安倍批判は強まっているのだろうか。 そのことについては機会をあためて書きたい。 私がここで言いたいのは、歴史認識問題についての安倍批判とは対照的に、慰安婦問題の難しさを村山首相自身が吐露した事である。 最近韓国を訪れて帰って来たばかりという村山首相が、慰安婦問題について次のように語った。 つまり、国家間の補償は1965年の国家間の補償で決着しているから難しいということで、それでは慰安婦基金をつくって日本国民としてお詫びするということで寄付を集め(日本政府の予算も一部投入し)、村山基金で解決をしようとしたことを説明したら、だから慰安婦基金は受け取る事は出来ないのだ、国家の誤りを国民の寄付でごまされてはたまらない、そういう声が慰安婦犠牲者側からあらためて出された、この問題は難しい、というような趣旨の発言を村山首相がしたのだ。 みずから苦労して作った村山基金が真の解決にならなかった事に対する、反省とも、慰安婦犠牲者側に対する不満ともとれる発言だった。 だからこの問題は、もう一度両政府の間で話し合うしか根本的な解決はないと言わんばかりであった。 私はこの話を聞いて、かねてから私が提案していたことが正しいと確信した。 1965年に結ばれた日韓国交正常化の基本条約を再交渉する大事業に取り組むしかない。 それを日本側から提起するのだ。 これはもちろん大事業である。 しかし、それには正当な理由がある。 当時の韓国は朴大統領の独裁政権下だった。 日本もまた60年代はじめは、今ほど民主主義が定着していなかった時だ。 その二つの政権が、それぞれの国民に隠して密約したのが日韓基本条約だった。 くわしくはここでは書けないが、私は担当官として当時の記録を見て知っているからいうのだが、官僚たちさえも知らないところで政治決着した賠償金であり、賠償問題の決着だったのだ。 いったん国家間で決めた基本条約を変えてはならない、などという約束は国際政治ではどこにもない。 それをしないのは、一大事業であるからだ。 有体にいえば厄介な問題が噴出するからだ。 しかしその時の政権が覚悟を決めれば出来ることだ。 確かに日韓基本条約を見直すことはパンドラの箱をあける事になる。 日韓両政府とも、国民との関係で説明責任を果たさなければいけない。 どちらも窮地に追い込まれる。 そしてより窮地に追い込まれるのは朴大統領のほうだろう。 実は、慰安婦問題で困っているのは、韓国政府、朴大統領も全く同じなのだ。 しかし、村山首相が語ったように、国家間による補償しか慰安婦被害者を納得させられないのなら、そこまで踏み込まなければ真の解決はない。 そして日韓基本条約の見直しが困難なら、それに手をつけない形で、何らかの国家間の解決策を模索するしかない。 それこそが安倍首相が朴大統領に提示する事だ。 そうすれば攻守ところを変える。 残念ながら慰安婦強制は無かったと強弁する安倍首相とその取り巻き連中には、そんな知恵は浮かばない。 面倒な仕事を避けたがる外務官僚は逃げる事しか考えない。 慰安婦問題の真の解決の難しさはここにあるのである(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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