□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2014年4月25日第340 ■ ========================================================= 戦後補償問題で民間企業を救えない安倍政権の無能さ ======================================================== 三井商船の船舶が中国当局から差し押さえられた事件は、三井商船が賠償金額約29億円に利子分を含めた40億円を支払ってスピード解決した。 しかし、この戦後補償問題は今後の日中関係や日韓関係にとって最大の懸案問題として存続し続けると思われるから一言書き留めておきたい。 韓国の慰安婦補償や強制労働徴用補償もそうだが、戦争中の個人補償問題、民間補償問題は、日韓基本条約や日中共同声明などで既に両国間で解決済みであるとするのが日本政府の立場である。 しかしそのような原則論を繰り返すしかない日本政府の対応は無能で怠慢であると私は繰り返し書いて来た。 国家間の合意であってもそれを変更する事は可能であるし、その後の事情変更の原則という国際法の法理もある。 ましてや日中共同声明は政治声明であり、戦後補償の詳細が日中政府間で合意されているわけではない。 責任は日本軍にあり、日本国民もまた日本軍の犠牲者である、とする当時の中国側の政治的配慮に甘えるところが大きかったのだ。 日韓間でも日中間でも、これ以上戦後補償問題が大きな政治問題になっていくなら、それを根本的に解決するためには、再交渉を経た上であらたな取り決めを作るしかない。 しかしここでは私のそのような考えの是非を議論するつもりはない。 日本政府が助けてくれない以上、民間企業が自分の力で最善の解決策を探るのは当然だ。 そしてそれは賠償金を支払って被害を最小限にとどめる事である。 金額の多寡とその支払いの不合理性を言うならトヨタが米国政府に支払った約1200億円の賠償金を思い出せばいい。 あの時トヨタはアクセルの不具合を理由に訴訟を起こされ、それが誤りだったことがあとで判明しても、「通告の遅れ」で賠償金を支払った。 これ以上の理不尽はないがトヨタとしては支払うことが得策だったのだ。 戦時中の補償をめぐり日本企業が韓国で提訴された時も同様だった。 すなわちあの時日本企業の中には賠償に応じるほうが得策と考えて賠償金を支払おうとした企業があったが、それを行うと「戦時補償は日韓基本条約で解決ずみ」と言い続ける日本政府の方針に反するとして日本政府は民間企業に圧力をかけ賠償支払いを止めさたことがあった。 さすがに今度は日本政府も三井商船について支払うなと言わなかったと見える。 果たして今後も続く同様の訴訟に日本企業はどう対応するつもりだろうか。 そしてそれに対して日本政府はいつまで、無策を決め込むつもりだろうか。 中国、韓国が突き付けるこの戦時補償の問題は、日本政府にとっての最大の懸案にとどまり続けるだろう。 安倍政権であるかぎりこの問題は沈静化せず、それに対して安倍政権は歴代のどの政府よりも打つ手がない政権であり続けるだろう。 それこそがこの戦時補償問題の最大の問題点なのである(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)
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