□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2014年3月20日第247号 ■ ========================================================= 中国政府が強制連行訴訟を認めた衝撃 ========================================================= 戦時中に強制連行された元労働者らが日本企業を相手に損害賠償を訴える訴訟が中国でも再燃したのは2月末であった。 当時の報道は、果たして中国の裁判所が提訴を受理するだろうかというものであった。 なぜならば共産党支配の中国では裁判所は国家の意志に反することは出来ないからだ。 裁判所が受理するということは中国政府がそれを認め、その判決は日本企業に損害賠償を求めるものになることは自明であるからだ。 果たして中国はそこまでやるか。 悲鳴と不安と怒りの混じった報道が当時なされたものだ。 それから三週間ほどたち、ついに3月18日、中国の裁判所が提訴を受理し、それが翌日19日の各紙で一斉に報じられた。 駄目押しするようにきょう3月20日の各紙が報じた。 ついに中国外務省の報道官が19日の定例記者会見で「裁判所が法に基づいて下した判断だ」と中国政府としてそれを支持したと。 今後の日中関係にとってこれ以上ない衝撃的なニュースだ。 しかもそれは日中関係を更なる困難なものにする最悪のニュースだ。 きのうのメルマガ第244号で書いた。 安倍首相の靖国参拝に激怒した習近平主席は安倍首相と全面対決する覚悟を決めたと。 まさしくこの強制連行提訴の受理は、あらたな、そして強烈な、対決の意思表示なのである。 ここまでくればもはや安倍首相は腹を決めて受けて立つしかない。 みずからの政治生命をかけて堂々と外交するしかない。 その対中外交とは何か。 これを機会に、本格的な日中国交正常化基本条約の締結交渉を日本側から提起することである。 しかし菅官房長官が19日に記者会見で語った第一声は、1972年の日中共同声明で中国側が賠償を放棄していると一蹴するだけの能のなさである。 そもそも韓国との間で提訴された慰安婦賠償や軍事徴用訴訟に関してもそうだ。 1965年の日韓基本条約とその関連協定で解決済みであると繰り返すばかりだ。 それはしかし怠慢な外交放棄でしかない。 いったん締結した条約を解消したり改定する事は外交の常だ。 出来ないことはない。 やっていけない事はない。 ましてや韓国よりもはるかに大きく重要な中国との戦後の国交正常化を1972年の国交正常化共同声明とそれを踏襲した1978年の日中平和友好条約で済ませたことが不十分なのである。 日中関係が歴史認識をめぐってここまでこじれてしまった今こそ、今度の強制連行訴訟をきっかけに日本からあらたな基本条約づくりの交渉を提案すべきなのだ。 もちろん韓国に対しても同様に1965年の日韓基本条約の見直し交渉を提起するのである。 これこそが戦後レジームの正しいチェンジである。 なぜ安倍首相と菅官房長官はそれを行おうとしないのか。 それを行なわない理由は何か。 何もないはずだ。 あるのは解決すべき問題が多くて困難な交渉になるという事だけだ。 要するに面倒くさいのだ。 中国や韓国がそれに応じられないようでは中国、韓国の負けだ。 日本は逃げ回っているだけではなく、もっとまじめに正しく、強い外交をしてみろという事である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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