□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年5月13日第343号 ■ ============================================================== 人種差別主義者だったリンカーン ============================================================== 歴史認識についての議論が盛んだ。 きっかけを作ったのは安倍内閣を支える国家主義者たちだ。 たとえばその一人である高市早苗政調会長は今でもまだこんな事を言っているらしい。 「(村山談話に)侵略という文言を入れているのは私自身しっくりきていない。自存自衛のために決然と戦うというのが当時の解釈だった」(5月12日福井市内での記者団を前にして) なぜ歴史認識が食い違うのか。 それは歴史の史実に謙虚でないからだ。 私がここで言う謙虚とは、我々は史実のほんの一部しか知らないということを謙虚に認めた上で常に真実を追及し続けなければいけないという意味だ。 自分が聞きかじった限りの情報をつまみ食いして全体を軽々に語るなという事である。 ましてや政治的に責任のある立場の人ほど謙虚であるべきだ。 たとえばきょう5月13日の朝日新聞でリンカーン米大統領は人種差別主義者だったという特集記事があった。 その記事によれば、リンカーンにとって、南北戦争の本来の目的は奴隷制廃止ではなく、南部諸州(南部連合)を合衆国へ再統合することだったという。 それを示すものとしてリンカーン自身が1862年に知人に当てた次のような手紙が紹介されている。 「この戦争における私の至上の目的は連邦を救うことにあります。奴隷制を救うことにも、それを滅ぼすことにもありません。もし奴隷は一人も自由にせずに連邦を救うことができるのなら、そうするでしょう」 すなわちリンカーンの奴隷解放宣言は、南部連合が受諾できない「奴隷制度廃止」というハードルを示して講和の芽を摘み、戦争を最後まで遂行させ、南部連合の動きを制圧する意図があったというのだ。 少なくともこの史実を私は知らなかった。 歴史というのは、次々と発掘されるあらたな資料や、秘密文書の露見によって、終わりのない真実の追求の積み重ねで作られていくものである。 その膨大な史実の前に我々は謙虚でなければならない。 間違っていた思い込みを素直に見直す勇気が必要である。 もっとも、都合のいい部分だけを強調して政治的目的を達成しようしたり、知識は決断の邪魔になるといわんばかりに最初から不勉強を決め込むというのであれば話は別である。 しかしそのような試みは必ず歴史に罰せられることになる(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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