■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年3月16日第187号 ■ ============================================================== 日本はTPPの対応でこれからもっと消耗させられていくだろう ============================================================== 3月15日に安倍首相がTPP交渉参加の声明を発表した。 安倍首相としてはこれで終わりにしたいところだがそうはいかない。 不毛なTPP論争はこれから先も延々と議論は続くだろう。 いや、不毛な議論だけなら一人相撲でごまかすことができる。 これからは米国とのTPP参加前の事前交渉が本格化し、そこで米国の不当な要求が次々と突きつけられてくるだろう。 それがまたTPP交渉参加の是非を巡る議論に跳ね返っていく。 こうして安倍政権はTPPの対応で消耗していくことになる。 なぜ議論はいつまでたっても不毛なままなのか。 それは議論がまったくかみ合わないからだ。 なぜ議論はかみ合わないのか。 それは、TPP問題は経済問題にとどまらず一大政治問題であるからだ。 それよりももっと大きな理由がある。 それはTPP協定の内容はおろか、TPPについての米国の立場について日本は何も知らされていないからだ。 実態がわからずに憶測で議論をしてかみ合うわけがない。 そしてここからがこのメルマガの目的であるが、TPPに関する米国の立場そのものがバラバラであり、日本はそんな米国に振り回されることになるのだ。 まずオバマ大統領と米国議会の関係がある。 米国の政治を少しでも知っている者ならばわかるはずだが米国大統領には貿易交渉の権限はない。 いわゆるファストトラックという通商交渉を一括できる大統領の大きな権限がこのTPP交渉に関してオバマ大統領に授権されているという話を私は聞いたことがない。 ひょっとしてオバマ政権と交渉するだけでは終わらないかもしれないのだ。 それに加えて米国企業と米国政府の立場も異なる。時として敵対する。 三番目に、交渉になれば通商交渉の米側責任者である米国通商代表部代表の考えが重要になってくる。 要するにTPP交渉は、始めて見ないとどうなるかわからない要素が多すぎるのである。 そんな米国の出方に振り回されることになるのである。 奇しくも日経新聞では元米通商代表部代表カーラ・ヒルズ女史の「私の履歴書」の連載が続いている。 そしてきょう3月16日の連載第16回には驚くべき事が書かれている。 そこには一切の貿易制限を批判するカーラ・ヒルズ代表の自由競争礼賛の言葉が書かれている。 すなわちかつて日本政府が米国自動車業界に配慮して自動車の対米輸出に自主規制をしようと申し入れた時、カーラ・ヒルズ通商代表部はそれを受け入れるなとブッシュ大統領に進言したという。 すなわち自主規制を受け入れて米国の自動車産業を甘やかせば、米国の自動車産業は衰退する、だから反対した。そして自分が正しかった事は歴史が証明してた。そう書いているのである。 そして返す刀で日本の農業の保護政策を「これには本当にいらだたせられる」と書いている。 日本がいくら農業を保護しようとしても一蹴されるおそれは常にあるのだ。 その一方で、米国自動車界はカーラ・ヒルズ女史の意見などお構いなしに米政府に保護政策を要求し、米議会もそれを後押しした。 要するに日本は、これからは米国の様々な内部対立に翻弄され、結果的には、最も厳しい要求を飲まされることになるのだ。 TPP交渉参加の本当の問題はこれから表面化してくる。 安倍政権はTPP交渉参加問題で消耗させられていくに違いない。 おろかな決断をしたものだ(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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