□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年3月9日第173号 ■ ============================================================== 北朝鮮に対する国連安保理制裁強化を喜ぶ日本の的外れ ============================================================== 日本時間の8日未明、国連安保理は北朝鮮の核実験に対する制裁強化決議案を全会一致で採択した。 その内容がかつてなく「強力で広範なもの」(ライス米国連大使)であるとともに、「国連憲章7章」下の強制力のある措置であること、そしてそんな決議に中国が賛成し全会一致で採択されたことなどが衝撃を持って受け止められ、報じられている。 今後北朝鮮問題はどう展開していくのか。 それはもちろん分からない。 しかし一つだけはっきりしていることがある。 この国連安保理決議の制裁を、「日本の求めてきたものを盛り込むことが出来た」(3月9日読売)などとあたかも日本の外交の勝利だなどと喜ぶ日本政府の的外れぶりである。 今度の制裁決議の裏には二つの注目点がある。 一つは米朝関係の緊張がいまだ本物ではないということだ。 北朝鮮は米国への先制核攻撃も辞さないなどと脅しているがこれは芝居だ。 米国は北の核を自国への脅威などと少しも思ってはいない。 米国がおそれるのは北の核がテロやテロ支援国家のイランへわたることだ。 北朝鮮もそれを知っている。 だから北朝鮮が本気で反発するなら、テロに核を拡散するぞと脅せばいいのだ。 しかしその時点で米国はアフガンやイラクのように北朝鮮を潰しにかかるだろう。 だから決して北朝鮮はそれを口にしない。 北朝鮮の激しい米国批判が芝居臭いと私が思う理由がそこにある。 もう一つの注目点は米中関係である。 中国は今回の対北朝鮮制裁安保理決議に賛成したことによって米国に大きな貸しをつくったことになる。 繰り返し言うように米国の最大の関心事は北朝鮮の核の中東への拡散である。 今度の制裁はそれを防ぐためのものだ。決して北朝鮮の核を廃棄させようとするものではない。 中国は北朝鮮の核が中東にしないことに協力したのだ。 これでアジアにおける米国と中国の対立はしばし遠のいたということだ。 日本は中東への北朝鮮の核の拡散も、アジアの米中のせめぎあいにおいてもつねに蚊帳の外だ。 米国にとっても中国にとっても日本の影響力はない。 今度の北朝鮮の制裁決議が日本の外交の勝利だなどと本気で思っているとしたらおめでたい(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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