□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年3月5日第164号 ■ ============================================================== 東電を訴えた米海兵隊のその後を伝えるアエラの記事に思う ============================================================== 私は昨年12月28日のメルマガ第951号「福島被曝賠償を米兵から訴えられた東電とその衝撃 」で要旨次のように書いた。 さすがに米国は訴訟社会だ。どんな事でも訴訟のネタにする米国人の感覚には違和感を覚える。時として法外な賠償を命じる米国の判決には疑問を抱く。しかし今度の訴訟だけは私はそれを歓迎する。そして米連邦地裁が東電に賠償を命じる判決を下す事を期待する。トモダチ作戦ぐらいで被曝するというのなら福島住民の被曝はどうなんだ。比べ物にならない。米海兵隊8人で94億円の賠償が認められるなら福島住民も一人あたり10億円以上貰わなければ米兵との間で不公平になる。この訴訟は日本で行なわれている東電に対する被曝訴訟に影響を与えざるを得ないだろう。福島の被曝民がこの米国の訴訟の影響を受けて今度こそ正当に補償される事を期待する。この訴訟のその後の展開から目が離せない、と。 その後2ヶ月以上もたつというのに米兵の訴訟のその後の情報はまった伝わってこない。 そう思っていたら発売中の週刊アエラ3月11日号が書いてくれた。 すなわち、この訴訟は米国内で支持を得る可能性大であると。 それを見込んでか、すでに原告側の弁護士と東電は直接接触を行なっていると。 私が注目したのはアエラの記事が指摘するその根拠だ。 原告側は次のようにその訴えの正当性を語っているという。 すなわち東電は放射線量の数値と危険性について、日本政府と共謀の上、虚偽で誤解を招く情報を、意図的、無頓着に、米海軍を含めた公衆に広めた、錯覚させた、と言うのだ。 トモダチ作戦を指揮した米軍を訴えずに、東電を訴えたのも、米海軍もまた誤った情報を与えられた被害者だからというのだ。 なるほど、いかにも米国人の起こした訴訟らしい。 いっそのこと日本政府も訴えたらどうかと思いたくなる。 二つ目の根拠は、アエラの記事が書いている米国における裁判の特徴だ。 一つは陪審制だ。「同胞」の訴えは陪審員の共感を得やすいという。 もう一つは「クラスアクション」と呼ばれる日本には無い集団訴訟の制度だ。すなわち本人の同意がなくとも、利害の共通する人々を原告に含め、賠償金などを勝ち得た際に分配するという。 とんでもない裁判の手法と思うが、なるほど、このような米国の裁判を考えると勝訴の可能性が大というもの頷ける。 しかし、私がこのアエラの記事を読んで抱いた感想はまったく別のところにある。 それは、このアエラの記者の視点が、日本の被害者救済に向けられているのではなく、米国の訴訟社会を批判しているかのように思えるところだ。 そしてこの米国の訴訟の成り行きがどうであれ、東電や日本政府関係者を訴えた日本の訴訟は不起訴になる可能性が高いと醒めた視点で書いているところである。 私の視点とは正反対である。 弱者の視点ではなく、強者の側に立った朝日新聞を代弁するかのような記事であると思って私はこの記事を読んだのである(了)。 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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