□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年3月4日第160号 ■ ============================================================== 額面どおりには受け取れない世界保健機関の被曝報告書 ============================================================== 世界保健機関(WHO)が福島原発事故の被曝による健康影響に関する報告書を発表したのは2月28日だった。 その結果を3月1日の各紙が一斉に報じていた。 それによれば事故後15年で1歳女児の甲状腺がんが浪江町では被曝前の発症率で9倍増加し、原発作業員のリスクは甲状腺がんなど最大30倍以上に増えるなどと予測している。 これを深刻に報じるメディアがあった。 そして環境省と厚生労働省は「線量推計値の仮定が実際とかけ離れている。この報告書は未来予想図ではない。この確率で絶対にがんになる、とは思わないで欲しい」と反論した(3月1日朝日)。 どちらの反応も間違っていると思う。 報道を詳しく読んで見ると、ほとんどの地域において甲状腺がんの発症率増はわずか数%どまりである。 だから3月1日の読売新聞などは「福島原発事故 がん患者増可能性低い」という見出しで、このWHO報告書の被曝数値をむしろ積極的に評論しているかのごとくだ。 それどころか読売新聞は、「リスクの見直しを避けるために極端な条件を仮定しており、被曝の影響が過大評価されている可能性が高い」などと書き、「結果だけを見て不安になる住民がいるかもしれない」、「過大な評価で風評被害を招いては本末転倒だ」などといった専門家の言葉を掲載して騒ぎたてるなといわんばかりだ。 私はこのWHOの報告書の数値を額面どおりには受け取らない。 過大評価どころかむしろ実際の危険性を過小評価しているとさえ思っている。 私がそう思う根拠は、先日福島に講演に行った時に主催者が発行している「IAEAに正しく対処するための参考資料集」という冊子を読んだからだ。 ここからがこのメルマガの本題である。 フクシマ・アクション・プロジェクトという名のNPO事務局が編集・発行しているそのパンフレットには、被曝が健康に及ぼすあらゆる報告書公表に関する国際原子力機関(IAEA)と世界保健機関(WHO)の取り決めについての解説が書かれている。 それによれば、IAEAとWHOは同じ国連決議で設立された国際機関であってもIAEAの方が優位にあることがわかる。 すなわち通常の専門機関はその報告書を国連総会に報告すればいい事になっているのに比べ、IAEAだけは安保理事会に対しても報告義務があり、また1959年に交わされたIAEAとWHOの「合意書」によれば、WHOは放射線被曝に関するあらゆる事項はIAEAと協議の上、IAEAの合意なくしてはその報告書を公表できないという事になっているのである。 賢明な読者なら私が何を言おうとしているかお分かりだろう。 IAEAの事前検閲を経て発表されるWHOの被曝報告書など、決して額面どおりには受け取れないということである(了)。 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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