□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年2月25日第144号 ■ ============================================================== 日米首脳会談後に共同記者会見が行なわれなかった背景を読む ============================================================== 今度の日米首脳会談後に共同記者会見が行われなかった事は確かに前代未聞の異常さである。 この事をもって、安倍首相が軽んじられたとか、米国が安倍訪米を歓迎しなかったと解説するのはたやすい。 そしてそういうことかもしれない。 しかし一歩下がって考えて見ると、それが日米双方の周到な合意であったかどうかは別にして、共同記者会見をしなくてよかった理由が双方にはあったのである。 米国にとってはそもそも今度の日米首脳会談について共同記者会見を行なわなければならない特段のメリットはない。 日本と違って日米同盟強化を世界に向けて謳うメリットは米国にはない。 日米同盟強化を謳って日本から普天間移設や在日米軍支援を勝ち取るのは、何も共同記者会見を開かなくてもオバマ大統領に首脳会談で一言しゃべり、それを日本の国民向けに日本のメディアに流させれば用が足りる。 日米同盟強化を謳って中国をけん制する効果よりも、いたずらに中国を刺激するマイナスのほうが米国にとっては大きいのである。 ひるがえって日本はどうか。 日本は勿論共同記者会見を開いて日米同盟強化を謳いたかったに違いない。 しかしそれを米国が嫌った堵しても、今回ばかりはどうしても共同記者会見を開いてくれと米側に強く迫る理由は日本側にもなかったのだ。 今回の訪米で日本が重視した最大の要求はTPPに関する例外扱いについての米国側の言質をとりつけることであった。 安倍首相のTPP交渉参加の最大の障壁は野党対策ではなく自民党対策であり国民対策であって、そのために口実が必要だったのだ。 しかし米国は他国との交渉の手前日本だけに事前の例外を認めることなど決して応じられない。 その妥協の産物があの歴史に残る玉虫色のTPPに限った共同声明の発出だったのである。 それを発出に応じる事が米国の譲歩であった。 その譲歩を取り付けるために日本側は共同記者会見の開催に固執することをあきらめたのだ。 そしてまた日本側としても共同記者会見が開けれなかったという醜態を甘受するメリットもまたあった。 唯一の文書であるTPPに関する共同声明ばかりに日本のメディアと国民の関心が集中した事により、その他大勢の対米従属政策の丸呑みが、まったく気づかないままに素通りさせる事ができたのである。 具体的には原発ゼロの撤回約束、ハーグ条約、普天間基地移転問題など、一体どれだけ多く対米迎合策が、どれだけの分野で約束をさせられたのかがまったく国民の目に届かないままに「日米同盟の信頼関係を取り戻す事ができた」の一言で片づけられてしまったのである。 その一例がきょう2月25日の各紙が報じている米軍弾道ミサイル探知用移動式レーダー「Xバンド」の配備である。 米国のミサイル戦争の武器が日本に持ち込まれる。 しかもよりによって自衛体基地内に配備される。 ミサイル戦争が起きた時に自衛隊の基地が真っ先に攻撃される事になるのだ。 その昔私が安全保障会議の担当審議官であった時、日本の装備の改編・強化は安全保障会議の重要な決定事項であった。 それが今となっては国民の目から遠ざけられた官僚同士の話し合いで決められ、国民はそれを新聞報道で事後承認させられるだけとなってしまっている。 「日本を取り戻す」と公言して自主防衛を目指す安倍首相の下でどんどんと日本の属国化が進んでいく。 もはや共同記者会見などは日本にとっても不要であり、不都合だったという事である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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